研究分担者 |
後藤 文男 日本電気(株), 機能エレクトロニクス研究所, 課長
並河 建 東京工業大学, 大学院総合理工学研究科, 助手 (40016415)
山崎 陽太郎 東京工業大学, 大学院総合理工学研究科, 助教授 (50124706)
松原 浩 早稲田大学, 理工学部, 助手 (00202325)
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研究概要 |
垂直磁気記録媒体の作製は四元(CoNiReP)または五元系(CoNiReMnP)コバルト合金薄膜により垂直磁気異方性を持つ薄膜が合成できたが,さらに3元系(CoNiP)によっても垂直磁気記録が可能となる媒体のための新めつき浴を開発した。この垂直磁気記録媒体は,下地膜により記録再生特性が大きく変化することを見出し,より高密度記録が可能な媒体を下地層との組み合わせで検討した。下地層として,結晶質NiPではいわゆる“二層膜効果による出力増大がおこり,非晶質NiPでは“磁性層結晶性向上効果による高密度記録側の改善が見られた。下地層としてNiWP膜を用いた媒体では,上記の二つの効果が相乗的に働き,高い記録密度特性が得られることが明らかとなった。すなわち,ギャップ長0.35μmMnZnフェライト・リングヘッドにより300kFRPlの3次ピ-クが確認でき,ギャップ長0.2μmセンダスト・リングヘッドによりD_<50>=172kFRPlが得られた。また,下地層膜厚は300A程度の極薄膜が適していることが認められた。さらに,NiMoP膜を下地層とした媒体では,NiMoP上にめっきされる垂直異方性媒体に初期準軟磁性層が生じ,その初期層膜厚は,下地のMo含有量を因子として制御できることが明らかとなった。このような媒体の構造評価をSEM,TEM,RllEED,EDX極所分析(12A直径),さらにはエッチングを利用した分析により,非磁性非晶質のNiPが主体となった構造中にCo合金が分散偏析していることが確認でき,このような構造が磁区の孤立化を容易にし高密度記録が可能となっていることが明らかとなった。 最終的に,以下のようなリングヘッドによる垂直磁気記録媒体の設計指針を示した。 (1)初期薄膜時に高保磁力層をもたず,(2)とくに表面付近のc軸配向性が高く,かつ(3)再生出力増大効果が期待できる準軟磁性初期層を有する媒体がリングヘッドとの組み合わせで最適であると考えられる。高密度記録には垂直ヘッド-垂直二層媒体という組み合わせが基本的であると考えられていたが,感度の高いリングヘッドと上述のような垂直二層媒体(特に下地層が準軟磁性層である点が特色)の組み合わせによっても良好な高密度特性が得られることを明らかにした。
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