研究概要 |
心臓には大量のFABPが存在し、細胞内可溶分画のFABPは分子量が小さく、約14Kdであった。FABPが心筋細胞分画に存在し、低分子量であることに注目し、心筋細胞障害時に、細胞外へ流出すると考え、流出FABP量と細胞障害度に相関がないか検討した。低酸素下にて心筋細胞の死亡率は4時間で20ー30%、6時間で50%に達した。細胞外に流出するCPKは60mmの細胞培養液4.5mlを500μlに濃縮しなければ検出できなかった。FABPは培養液を濃縮せずに十分検出可能であった。FABPの細胞外への流出は20ー30分頃から検出できた。その流出パタ-ンは図1の細胞障害のパタ-ンと類似してした。低酸素時細胞外へ流出してくるFABPが細胞質FABPであることを確認するために、培養液をSephadex G100,DE52カラムを用い精製したところ、心筋細胞質より精製したFABPと比較した。ゲルろ過し溶出分画の脂肪酸結合能をみると、ボイドの位置と、後に溶出される低分子量の位置に活性ピ-クがみられた。前者は混入アルブミンによるものと思われた。後者をFABP画分としてプ-ルした。ゲルろ過によって得られた画分を、DEAEーセルロ-スクロマトグラマフィ-にかけると、Nacl 0.18Mに相当する緩衝液濃度の位置に脂肪酸結合能の高いピ-クが得られた。培養液に流出したFABPの精製パタ-ンは細胞質より精製した物と一致した。FABPの細胞外への流出機構、すなわち心筋障害のメカニズムを検討するための心筋保護剤としてα,βーblockade,Caーantagononist,PGI_2を投与したところ、FABPの細胞外への流出はβーblockade,Caーantagononist,PG精剤で抑制でき、またtrypanblueによる細胞死亡率もこれらの薬剤にて低下した。 以上より、細胞外へ流出するFABPは細胞障害のマ-カ-として使用可能と考えられた。
|