研究概要 |
昭和63年度,平成元年度では,これまで報告を行ったように基礎研究を主体に行ってきた。本年度はこれらの基礎的検討結果をもとに臨床的検討を試た。 1.対象および方法 対象は矯正治療のため便宣抜去が必要な男性2名,女性5名の計7名で,年齢は13〜24歳であった。抜歯対象歯は上顎あるいは下顎の第一小臼歯の16歯で,両側一対とし,任意に選択した一方を超音波施行群(以下US群),反対側を対照群とした。方法は抜歯対象歯を浸潤麻酔後,われわれが考案した抜歯用超音波チップを歯根膜腔内へ挿入し,歯根膜線維の切断を行った。超音波チップの作用時間は60秒間とし,処置後,ストレインゲ-ジを貼った鉗子で抜歯を行った。このストレインゲ-ジに生じたひずみ力から,われわれが開発した抜歯力測定システムによって,全抜歯力および抜歯所要時間を算出した。 2.結果 全抜歯力ではUS群,2.30×10^3.±.1.80×10^3 Kg・sec (n=8),対照群8.80×10^3.±.6.12×10^3Kg・sec(n=8),抜歯所要時間ではUS群13.4(±.8.6sec,対照群46.3±.32.9secと抜歯力,所要時間ともに両群間に明らかな有意差が認められた(P<0.05)。術中,術後の異常出血例や術後創傷治癒不全(ドライソケット)例など異常所見はみられなかった。 以上の結果から本法は十分に臨床応用可能であると考えられた。
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