ADAM(A__- d__-isintegrin a__-nd m__-etalloproteinase)は各種増殖因子やサイトカイン前駈体のエクトドメイン・シェディングに関わる主に膜結合プロテアーゼである。ADAMは細胞の恒常性維持や発生・形態形成過程で重要な働きを担うと共に、アルツハイマー病、がん、心疾患なと様々な病態にも関与することが明らかになり、創薬の対象としても関心が持たれている。しかし、構造生物学的知見が乏しく、どのように基質認識が行われているか、生理的な基質とその切断制御がどのように成されているかはほとんどわかっていないのが現状である。本研究では、蛇毒ADAMホモログ分子群に着目して、蛇毒ADAMと結合するタンパク質の共結晶を構造解析することでADAMの基質認識機構の知見を得ることを目的としている。昨年度、ラッセルクサリヘビ由来の血液凝固第X因子活性化酵素RVV-Xの結晶構造を解明し、RVV-XによるX因子の活性化モデルを提案した(Takeda et al.FEBS Lett.(2007))。本年度はこの研究を継続してRVV-XとX因子との共結晶化に取り組んだが、残念ながら共結晶を得るに至らなかった。一方で、クイコブラ毒由来kauthiaginの結晶化に新たに取り組み、3Åを超える分解能を有する結晶を得ることに成功し解析を進めている。Kauthiaginは血小板血栓形成に重要なvon Willebrand因子(VWF)をそのAlドメイン下流で特異的に切断するADAMと同様のMDCドメイン構造を持つ酵素である。VWFに特異的に強く相互作用することから共結晶化のターゲットとして有望と考えられた。VWFのAlドメインを大腸菌により大量発現し、共結晶化のスクリーニングを進めているが残念ながら現在までに共結晶は得られていない。
|