研究概要 |
本年度は空間的属性を伴うパネルデータについて,空間的自己回帰(SAR)過程に従う誤差項を伴う場合のSURモデルについて,一般化積率法を用いた推定手順を開発し,この推定量について数値実験を通じて有限標本下での性能を明らかにした.これらの成果を学会(日本経済学会,応用地域学会)における発表などを通じて,その問題点と今後の可能性について議論を行うことができた. 具体的には,t期に各地点iにおいて観測されるP種類の事象y_<it>=(y_<it>^<(1)>,...,y_<it>^<(P)>)'に対して,それぞれの事象y_<it>^<(p)>ごとに, y_<it>^<(p)>=X_<it>^<(p)>b^<(p)>+e_<it>^<(p)>の線型方程式で定式化したとき, SURとしてe_<it>^<(p)>, e_<it>^<(q)>間で相関を想定すると共に,空間的な関係に応じてe_<it>^<(p)>, e_<jt>^<(p)>間での相関も想定したモデルについて取り組んだ.ここで, X_<it>^<(p)>は外生的な説明変数行列, b^<(p)>は非確率的なパラメータベクトル, e_<it>^<(p)>は撹乱項とする.ここで,推定方法を開発するに当たり,撹乱項e_<it>^<(p)>の確率分布を特定化することを要しない一般化積率法を用いて,より応用研究上有用な手順を開発した点が特徴的といえる.さらに,開発された推定量についてモンテカルロ実験を通じた有限標本下での性能を調べたところ,一般化積率法を採用したパネルデータに関する推定量の先行研究の結果と比べても遜色のない性能が明らかになり,十分実用に耐えるものが得られたことが明らかになった. これらの成果の一部は発表などを通じて公表を行ったが,今後さらに精査を進めた上で雑誌投稿を行う予定である.
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