研究実績の概要 |
本研究では、金属錯体と配位子を元素ブロックとして用いて高分子材料を集積させて高分子材料の接着システムを創製した。さらに金属錯体と生体高分子との複合体形成を利用して、ヒドロゲルを自己組織化させるとともに、ゲルの集積・解離により触媒機能がオン・オフできるようなシステムを開発することに成功した。また遷移金属元素のイオンを転嫁するだけで高分子ヒドロゲルが接着するシステムを構築することができた。塩化ルテニウムを含む水溶液を浸漬したポリアクリルアミド (pAAm) ゲルが、塩化ルテニウムを含まない fresh pAAm ゲルと接着する現象を見出した。強い配位部位を持たない pAAm が、金属塩の存在により接着した例は現在までになく、興味深い現象である。 アクリルアミドと化学架橋剤である N,N'-メチレンビスアクリルアミドを水中でラジカル重合することにより、pAAm ゲルを得た。0.1 M 塩化ルテニウム水溶液に 1 時間浸漬した pAAm ゲルと、fresh pAAm ゲルの両者を接触させた。ポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド) (pDMAAm) ゲルまたはポリ(N-イソプロピルアクリルアミド) (pNIPAAm) ゲルを 0.1 M 塩化ルテニウム水溶液に 1 時間浸漬し、fresh ゲルとの接着の可否を観察した。塩化ルテニウム水溶液に浸漬した pAAm ゲルと fresh pAAm ゲルは強く接着し、水中で振とうしても解離しなかった。一方、塩化ルテニウム以外の各種金属塩水溶液を用いた系では、pAAm ゲルは接着しなかった。さらに、pDMAAm ゲルや pNIPAAm ゲルを用いた系でも、接着は見られなかった。以上のことより、この接着が pAAm、塩化ルテニウムを用いた系のみにおいて見られる特異的な現象であることがわかった。
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