公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本研究では、固体結晶中で水素ダイナミクスとπ電子が連動した特徴的な電子物性を示し、50 Kで相転移を示すκ-H3(Cat-EDT-TTF)2に対して、誘電率、精密X線構造解析、および赤外分光測定を行い、水素ダイナミクスとπ電子が互いに強く結合した結果生じる劇的なサーモクロミズムの観測に成功した。このような相転移現象は、π電子のみの系では決して現れなかった新奇な現象であり、水素結合とπ電子が結合することで初めて発現するπ電子系における新現象・新機能を具現化した成果と言える。また、当該年度は幾何学的フラストレーションを有する三角格子系有機導体θm-(BEDT-TTF)2TlZn(SCN)4においてノイズ測定を行い、π電子のガラス化に向けたダイナミクスの凍結と動的不均一性を観測することに成功した。また、局所精密赤外分光測定から、動的不均一性の起源が、電荷秩序クラスターの成長によることを明らかにした。さらに高エネルギー加速器研究機構(KEK)の放射光施設フォトンファクトリーを利用した精密構造解析により、電荷ガラス形成には二等辺三角形の幾何学的フラストレーションが重要であること明らかにした。また、π電子の結晶化過程が一般的な液体-結晶転移で見られる核生成-成長メカニズムで記述されることを明らかにし、π電子のガラス化・結晶化現象が、一般的な構造ガラス形成液体と多くの類似点を有することを実験的に明らかにした。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (25件) (うち国際学会 6件)
Phys. Rev. B
巻: 92 号: 8 ページ: 085149-085149
10.1103/physrevb.92.085149