公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本研究の目的は、赤外レーザーや赤外放射光といった高輝度赤外光源を用いて、タンパク質微結晶(結晶サイズ100 μm以下)に適用可能な高感度顕微赤外分光技術を開発し、赤外分光とX線結晶構造解析との相補利用を促進することである。最終的にはX線結晶構造解析のビームラインでのon-line分光計測を目指す。X線結晶構造解析において、同一試料のon-line分光計測は、試料状態の評価、特にX線損傷の評価や反応中間体の同定などに有用である。本研究では、カビ由来一酸化窒素還元酵素(P450nor)を用いて、結晶の赤外分光の技術開発ならびにX線結晶構造解析との相補利用を進める。P450norは、脱窒において生成する細胞毒NOをN2Oにまで還元するヘム酵素である。昨年度は常温母液環境下にある結晶の赤外測定技術を開発したが、本年度はX線結晶構造解析で通常用いられる凍結結晶に適用可能な赤外測定技術を開発した。低温の窒素ガスを結晶に直接吹き付けることで100 Kを維持した。厚み30 μm程度のP450norのNO結合型結晶に応用し、SPring-8/BL43IRにて基質NOのNO伸縮振動を観測した。その振動数の値(1853 cm-1)から、ヘムに結合したNOは中性ラジカル状態であり、N-O結合距離は1.15 オングストローム程度であることが示唆された。最近われわれは、SACLAのフェムト秒X線パルスを用いてNO結合型P450norの無損傷X線結晶構造解析に成功したが、赤外分光で評価されたN-O結合距離の情報をNO配位構造の精密化に活かすことで、赤外分光とX線結晶構造解析の相補利用例を示した(論文投稿中)。P450nor以外にも、チトクロム酸化酵素や光化学系IIに対して結晶の赤外分光とX線結晶構造解析の相補利用を試みている。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件、 招待講演 3件)
Nature
巻: 543 号: 7643 ページ: 131-135
10.1038/nature21400
120006344935
Science
巻: 354 号: 6319 ページ: 1552-1557
10.1126/science.aah3497
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10.1107/s1600577515018275