公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
T細胞を「教育」する場としての胸腺環境の重要性は言をまたず、その発生過程に関する知見は急速に深まっている。その一方、老化に伴う「胸腺退縮」の過程で胸腺環境が受けている制御の詳細については、未だ不明な点が多く残されている。研究代表者は、ごく最近、胸腺環境のmTORC1シグナルを誘導的に欠失させることで、本来は「年」の単位で進む胸腺退縮の過程を「数週間」に縮めうることを見出した。本研究ではこの系をモデルに、胸腺退縮を引き起こす分子基盤の解明を目指すとともに、その生理的意義の検証に取り組んだ。FACS解析の結果、mTORC1シグナルの欠失により、mTEC:cTECの比率の低下が観察されると共に、上皮細胞数そのものの減少も観察された。種々の解析から、胸腺上皮細胞数の低下の背景には増殖能の低下が存在するものと考えられた。これらの結果は、老齢マウスに認められる胸腺上皮細胞の変化に類似しており、mTORC1シグナルの低下によって、老齢マウスに見られる胸腺退縮と同様の変化がもたらされている可能性が示唆された。実際、老齢マウスの胸腺を回収し胸腺上皮細胞におけるmTORC1シグナル伝達経路の活性を定量したところ、若齢マウス由来の胸腺上皮細胞に比して有意な低下が認められた。以上の結果は、老齢化に伴う胸腺退縮の背景に、mTORC1シグナルの低下が存在することを強く示唆している。そこで、mTORC1シグナルの胸腺上皮細胞特異的な欠失が全身の免疫応答に及ぼす影響を調べるべく、Raptorコンディショナルノックアウトマウスとタモキシフェン誘導性にCreを発現可能なK14-CreERマウスの交配を試みた。しかし、胸腺上皮細胞以外のK14陽性組織におけるCreの発現の影響が大きく、結果的に個体レベルでの免疫応答能を解析するには至らなかった。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
Sci. Rep.
巻: 6 号: 1 ページ: 38445-38445
10.1038/srep38445
巻: 5 号: 1 ページ: 12796-12796
10.1038/srep12796