公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
シロイヌナズナの花粉の外壁(エキシン)は、網状のテクタムが花粉表面から多数の柱(バキュラ)で持ち上げられた形の立体的な構造物である。網目構造の形成にはいずれも細胞壁多糖であるペクチンとキシランが重要な働きをしていることが前年度の研究からわかっている。本年度はこれも細胞壁多糖の一種であるアラビノガラクタンの役割について詳細に解析した。免疫染色実験から、アラビノガラクタンは四分子期の小胞子の表面に、ペクチンやキシランよりもやや遅れて現れた。その後、四分子が壊れて遊離小胞子になると、はじめはエキシンの外表面を覆うように、次いで花粉表面とテクタムの間を埋めるように多量のアラビノガラクタンが沈着する様子が観察できた。このアラビノガラクタンを生合成できないkaonashi4 (kns4) 突然変異体では、エキシンが異常に薄くなる表現型と、花粉四分子の始原細胞壁が分解されないため小胞子が葯室に分散できないという表現型が同時に現れた。この結果から、アラビノガラクタンにはテクタムを持ち上げてエキシンを厚く立体的にする機能に加え、始原細胞壁を分解する機能があることがわかる。エキシンの原料(スポロポレニン)はタペート細胞で作られて小胞子表面に供給されることから、葯室に分散できない小胞子はスポロポレニンをうまく受け取れず、エキシンの発達が不十分になるのだろう。アラビノガラクタンはさまざまな細胞の細胞壁に存在しているが、実験的にその役割を示した研究は少ない。本研究はエキシンの形成というアラビノガラクタンの機能の一つを実証したことに大きな意義がある。二年間の研究から、エキシンの形成にはペクチン、キシラン、アラビノガラクタンという三つの細胞壁多糖が重要な働きを持つことが明らかになった。細胞外にエキシンのような複雑な構造物を作ることができるのは、細胞壁を持つ植物ならではの能力だと言えるかもしれない。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Plant Physiology
巻: 173 号: 1 ページ: 183-205
10.1104/pp.16.01385
http://www.agr.nagoya-u.ac.jp/~biochem/ishiguro.html