公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder: ASD)は、「対人コミュニケーション障害」と「活動と興味の範囲の著しい限局性」を主な特徴とする神経発達障害である。発症頻度は総人口の約2%と非常に高いことから社会的にも大きな問題となっているが、その発症メカニズムは明らかになっておらず治療法も確立されていない。そこで近年大規模な原因遺伝子探索がおこなわれた結果、クロマチンリモデリング因子であるCHD8の変異が自閉症患者から多数発見されたことから、現在最も有力な原因遺伝子候補としてCHD8が大きな注目を集めている。CHD8によるASDの発症メカニズムを調べるため、われわれはヒト自閉症患者で発見されたCHD8の遺伝子変異を再現した新規自閉症モデルマウスを作製した。するとマウスは不安の増加、社会性行動の異常といった自閉症様の行動異常を示した。さらに胎生初期から中期にかけての脳で神経発生が遅延していることが観察され、この原因として神経分化に重要な転写制御因子であるRESTが異常活性化していることを発見した。RESTの活性化はヒト自閉症患者の死後脳から得られた遺伝子発現データからも同様の結果が確認できることから、RESTの異常活性化がヒトでも自閉症の発症に関わっていると考えられる。これらの結果は発生期におけるRESTの異常活性化が自閉症の原因であることを示唆する初めての報告であり、これに伴う神経発生遅延によって自閉症が発症すると考えられる。また、本研究で用いたCHD8変異マウスは自閉症のモデルマウスであることに加え、クロマチン動態の異常が原因となる疾患のモデルケースとしても非常に有用な研究ツールになると考えている。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Nature
巻: 537 号: 7622 ページ: 675-679
10.1038/nature19357
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10.1002/stem.2088
http://www.bioreg.kyushu-u.ac.jp/saibou/index.html