公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
細胞運動における細胞膜の変形(細胞膜運動)は、従来細胞骨格やモータータンパク質を中心とするタンパク質間相互作用を通じて理解され、膜そのものを構成する脂質の量的・質的変化による膜運動は見過ごされてきた。本研究では、膜運動を生み出す脂質二重層間におけるリン脂質の量的・質的変化に着目し、その作用機序の解明を目的とした。P4-ATPaseは、リン脂質を外葉から内葉へとフリップすることで生体膜の非対称性を調節する。P4-ATPaseは輸送小胞の出芽や細胞運動に関与することが報告され、膜の曲率変化(膜運動)に必要であることが考えられていた。しかし、P4-ATPaseのリン脂質フリップ活性が膜変形(膜運動)に関与するのかは不明であった。細胞膜に存在するP4-ATPaseファミリーのATP10Aがホスファチジルコリンをflipすることを初めて明らかにした。さらに、ATP10Aを過剰発現すると細胞のサイズが小さくなり、細胞の細胞外基質への接着およびspreadingが遅延することを見出した。外葉に多いホスファチジルコリンの内葉へのflipが亢進することにより、脂質二重層のリン脂質バランスが崩れ細胞の接着およびspreadingが阻害されたと考えられた。したがって、細胞膜二重層間のリン脂質組成変化を介して細胞膜のダイナミクスが変化することを初めて示唆した。一方で、エンドソームに局在するP4-ATPaseであるATP9Aはエンドソームから細胞膜へのタンパク質輸送(メンブレントラフィック)に必要であることを明らかにした。したがって、P4-ATPaseは細胞膜および細胞内オルガネラにおいて時空間的な脂質二重層間の組成変化を介して膜運動(膜変形)を担っていると考えられる。P4-ATPaseの細胞膜運動(膜変形)の調節が細胞運動を含む細胞機能にどのようにかかわっているかを解明するのが今後の課題である。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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