公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
酸素は、生体が生命活動を維持するために必要なエネルギーの産生に不可欠な物質であり、その消費は様々な生命機能と深く関わっている。例えば、成長過程など細胞が活発な活動をする際にはエネルギーの産生が必要であり、酸素消費が増進する。一方、酸化ストレス等により細胞内ミトコンドリアに異常が起こると、酸素消費量は低下する。従って、酸素と生命機能には強い相関があり、細胞内での酸素量をリアルタイムに可視化する分子プローブの開発が求められている。そこで本新学術領域研究では、細胞核内にプローブを送達する Hoechst33258 とりん光発光性ルテニウム錯体との複合化により、新しい細胞核内酸素濃度検出プローブ(Ru-Hoechst)を設計・合成し、その機能を評価した。まず、Ru-Hoechstプローブの水溶液に、405 nm の励起光を照射すると、600 nm 付近にルテニウム錯体由来のりん光発光が観測された。水溶液の溶存酸素濃度を変化させたところ、ルテニウム錯体に由来するりん光発光は、酸素濃度の増大に伴い減弱した。従って、Ru-Hoechstプローブは、酸素濃度の変動を可視化する機能を有することが明らかとなった。なお、Stern-Volmer プロットから算出した KSV 値は 982 M-1 であり、りん光発光は、酸素濃度の変動に対する応答であることが示された。Ru-Hoechst プローブは高い DNA 結合特性を有する。すなわち、A549 細胞の細胞核にRu-Hoechst プローブを集積させ。培地中の酸素濃度を 20% から 0% に変化させ、再度 20% に戻した結果、酸素濃度の変動に応答したりん光発光強度の増減が観測された。以上の様に、Ru-Hoechst プローブは、細胞の分化・発生において重要な役割を果たす細胞核の機能解明に有効なプローブである。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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