公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
細胞競合が、哺乳類の成長過程で重要な役割を果たすかどうかは十分に理解されていない。ヒト成人は約37兆個の細胞から成り、多数の細胞の間に、同種の細胞であっても、遺伝子発現レベルや細胞状態に、細胞競合のトリガーになるような異質性(heterogeneity)が生じる可能性は高い。本研究ではFucciマウスを用い、哺乳類の生理的成長プロセスにおいて細胞競合が果たす役割を解析した。Fucciシステムは、リアルタイム細胞周期リポーターシステムであり、増殖活性のある細胞を緑色蛍光色素(mAG-Gem(1/110)等)でマーキングできる。哺乳類での生理的成長における細胞競合を観察するため、Fucciマウスの各成長段階 (P0, P1, P2, P7, P14, P56)で肝臓および心臓を含む全身臓器の組織切片を作成し、細胞の増殖および細胞死について検討した。その結果、新生児期の肝臓および心臓において細胞死 (活性化型Caspase-3陽性) が認められ、さらに心筋組織では増殖性のFucciシグナルを呈する細胞に隣接して同細胞死マーカーが検出された。この知見は、若年の心筋細胞に何らかの異質性が存在して細胞の選別が生じる可能性を示唆した。マウス由来の初代肝細胞およびヒト由来の培養肝細胞を用い試験管内で異質な細胞が共存する実験系を確立した。その結果、培養肝細胞においては、癌遺伝子である変異型RAS (Ras-V12)を発現する細胞が野生型細胞による包囲依存性に細胞死することがわかった。この細胞死は死細胞を特異的に検出するSytox陽性であり、さらにCaspase阻害剤であるペプチドz-VAD-fmkによって阻害され、アポトーシスによる細胞死であると考えられた。これらの結果は、肝臓において遺伝子異常に基づいて不適合な細胞を除去するシステムが生体に内在していることを示唆した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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PLOS One
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