研究領域 | ステムセルエイジングから解明する疾患原理 |
研究課題/領域番号 |
15H01508
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
生物系
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
樗木 俊聡 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (50233200)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2016年度)
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配分額 *注記 |
11,180千円 (直接経費: 8,600千円、間接経費: 2,580千円)
2016年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2015年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
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キーワード | 再生医学 / 細胞・組織 / 免疫学 / IRF2 / IFNシグナル / 毛包幹細胞 / 腸上皮幹細胞 / 組織再生不全 |
研究実績の概要 |
皮膚や腸上皮の幹細胞性維持や加齢に伴う変化を、免疫系の組織幹細胞干渉による組織恒常性修飾という視点から検討することを目的とした。特にインターフェロン(IFN)シグナルを負に制御する転写因子IRF2の役割に着目した。 IRF2-/-マウス皮膚においては、IFNシグナル依存性の加齢に伴う脱毛と表皮の肥厚が観察されることが報告されていたが、毛包幹細胞の解析は皆無であった。研究代表者は、同マウス毛包幹細胞が加齢に伴いIFNシグナル依存性に減少することを見出した。さらに抜毛実験系を用いて同マウスの毛の再生不全を再現し、毛包幹細胞の運命追跡実験を行ったところ、本来毛の再生を担う毛包幹細胞が表皮に異常分化するという極めて重要な知見を得た。現在、IFNの作用点を含め詳細な分子基盤を追求中である。 IRF2-/-マウス腸上皮においては、腸上皮幹細胞の減少と5-FU腸炎における上皮の再生不全を見出している。また、腸上皮幹細胞の再生機能を評価できるオルガノイド培養系を用いて、同マウス腸上皮幹細胞のオルガノイド形成不全を確認している。さらにIRF2-floxマウスを作製し、Villin-Cre(腸上皮特異的)、Ah-Cre(パネート細胞以外の腸上皮特異的)と交配してVillin-Cre/IRF2-flox、Ah-Cre/IRF2-floxマウスを得た。そして、それらマウスでも5-FU腸炎における上皮の再生不全を見出している。 現在、皮膚ならびに腸上皮の幹細胞を用いて行ったマイクロアレイデータに基づき各種解析を行い、詳細な分子メカ二ズムを解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は主に腸上皮幹細胞の幹細胞性維持におけるIFNシグナル・IRF2の役割を検討する予定であったが、併行して毛包幹細胞の解析を進めることができた。その結果、慢性的なIFNシグナルによって毛包幹細胞が性状変化を起こし、本来毛の再生に関わるべき幹細胞が表皮に分化するという重要な知見を得ることができた。一方、腸上皮幹細胞の解析も概ね順調に行った。IRF2-/-マウス毛包幹細胞の加齢に伴う機能不全・異常がI型あるいはII型IFNR-/-マウスとの交配(IRF2-/-IFNAR1-/-, IRF2-/-IFNGR1-/-, )によって解消されるのとは対照的に、IRF2-/-マウスの腸上皮再生不全はIRF2-/-IFNAR1-/-マウスで回復しない。この予想外の結果を検証するために、現在、CRISPR/CAS9システムを用いて、IRF2-/-IFNAR1-/-IFNGR1-/-マウスを作製中である。
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今後の研究の推進方策 |
皮膚毛包幹細胞の場合には、慢性的なIFNシグナルが同細胞の異常分化につながる因果関係が明確である。残された課題は、IFNの作用点と毛包幹細胞の異常分化を引き起こす機構の解明になる。IFNの作用点を明確にするために、表皮組織にIFNシグナルが入らないIRF2-/-マウス(IRF2-/-K14-Cre/IFNAR1-flox/IFNGR1-flox)を作製中である。腸上皮幹細胞の場合には、すでに述べたようにIRF2-/-IFNAR1-/-IFNGR1-/-マウスを作製中である。同マウスを解析することによってIFNシグナル依存性が明らかになる。また、IRF2-/-マウスを用いるだけでなく、野生型マウス皮膚にImiqimodを塗布、あるいは野生型マウスにPoly ICを頻回投与することによってIFN産生を慢性的に誘導し、皮膚や腸の幹細胞に同様な機能不全が誘導されるか検討することも重要である。さらに、IFNに限らず慢性炎症が毛包幹細胞の異常分化につながる可能性を、表皮特異的に活性化型STAT3を発現するマウスで検証する。これらの検討により、IFNをはじめとする慢性炎症刺激が組織幹細胞の異常分化の原因になることが証明できれば、皮膚や腸における多くの慢性疾患の病態解明につながることが期待できる。
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