公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
平成27年度の研究によって、交感神経刺激が血球のアラキドン酸経路を活性化し骨髄でPGE2を増産すること、またPGE2が前骨芽細胞を特異的に刺激してオステオポンチン蛋白の発現を増強し、未分化造血細胞の環境が破綻するのを防ぐ構図が見えて来ていた。平成28年度では、この血球が好中球であることを in vivo で確認していく研究を進めた。野性型マウスでは、G-CSF 12時間毎の第4~6投与あたりに発熱がみられるが、mPGES-1-/-マウスでは G-CSF 投与にてもこの体温上昇がみられず、mPGES-1 を血球側でのみ欠損したマウスでも同様に発熱はみられなかった。すなわち、血球がPGE2産生に基づく発熱を惹起していることが示された。抗好中球抗体で好中球除去したマウスや神経毒で交感神経を不活化したマウスではG-CSF投与での発熱が起こらず、交感神経に支配された骨髄好中球からのPGE2産生が確立された。また、mPGES-1 を血球側でのみ欠損したマウスでのG-CSFによる造血前駆細胞動員効率は約2倍に増加しており、好中球から産生されるPGE2は動員を抑制する方向に働いている事が明らかとなった。また、血球系におけるアラキドン酸経路は非常に反応が鋭敏であり、骨髄中PGE2の測定がマススペクトロメトリーを用いても安定しなかったが、骨髄採取の際のメディウムと採取後の処理を工夫することにより、手技に伴う非特異的なPGE2上昇を抑制でき、G-CSF投与中の変化を正確に再現性をもって評価する事ができた。これにより G-CSF 4回投与時の骨髄でのPGE2レベル上昇が確認できた。以上より、成熟造血細胞が神経支配下でPGE2産生を介して未分化造血細胞ニッチを制御する構図をin vivo で示す事ができた。現在この経路を老齢マウスと造血器疾患モデルで検討中である。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Blood
巻: 129 号: 5 ページ: 587-597
10.1182/blood-2016-07-725754