公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
いかなる生命現象も突き詰めるとタンパク質が駆動する化学反応がもとになっている。したがって、生命とは何か?という問いに答えるためには、タンパク質の機能メカニズムを明らかにする必要がある。この目的のためにはタンパク質の立体構造とダイナミクスの情報が不可欠である。本研究の目的は、タンパク質の構造ダイナミクスを研究するための微量高速混合装置の試作である。構想では、2つのインクジェットヘッドから高速(1~10 m/s)で吐出される微量(100 pL~1 nL)の酵素および基質をそれぞれ含む液滴を衝突させることによって混合し、酵素反応を開始させて分光法により時間軸に沿って追跡する。2台のインクジェットヘッドをそれぞれxyzθ軸微動ステージに固定したミキサーを製作した。そして、2つの液滴の衝突・混合を行った。一方、微量試料(80 μl)用吸い上げ式ヘッドについては、電圧パルス印加前に試料溶液が流れ出さないよう保持するために±5 kPa程度の安定した微圧を発生する必要があり、そのための微圧発生装置を組立てた。それを用いて吸い上げ式ヘッドによる液滴の吐出に成功した。ここまでを平成27年度までに行った。平成28年度にはフェノールレッドの蛍光強度がpHにより変化する性質を用いて混合の時定数を求めた。すなわち、フェノールレッドのアルカリ性溶液と酸性緩衝液を衝突させ、最終pHを酸性にすることにより、蛍光光度が低下する性質を利用した。この測定結果より、液滴速度3.8 m/sのとき、混合の時定数は300マイクロ秒と決定した。この装置によりペルオキシダーゼ(西洋わさび由来)と過酸化水素を混合してCompound Iを生成する系を測定中である。
2: おおむね順調に進展している
2台のインクジェットヘッドから吐出される2つの液滴を衝突させて混合するミキサーを組み立てた。その混合時定数を測定したところ、300マイクロ秒であった。この装置を酵素タンパク質であるペルオキシダーゼに応用する実験に取りかかった。
ペルオキシダーゼの系により、酵素タンパク質への応用の可能性を確かめる。次にシトクロムc酸化酵素に応用し、嫌気性を保った測定系に発展させる。また、合成タンパク質など微量しか得られない試料に対して応用していく。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (14件) (うち国際共著 6件、 査読あり 14件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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