公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
近年、新規物性の研究や高速電子デバイスへの候補として原子層複合材料が注目され、これらの物質の層間結合エネルギーや自由度を評価する手法が必要とされている。振動分光の一種であるマン分光において、励起レーザー光に近接した低振動領域を測定すると、共有結合よりも弱い分子間相互作用に由来する固有振動が観測され、原子層間結合力に関する情報を得ることができる。さらに偏光測定を顕微分光下で遂行することで、原子層構造の三次元的な柔らかさを評価することができる。本研究では、低振動数ラマン分光測定に偏光測定技術を組み合わせて、原子層複合材料という新規化合物群の物性に関する、包括的な基礎データを提供した。以下に主な成果を示す。(1)低振動数ラマン分光装置及びxyz3軸偏光顕微鏡の作製: 高NAの顕微分光光学系の特徴を生かし入射偏光を制御することでz方向を含めた純度の高いxyz3軸偏光測を可能にした。このような3軸方向測定から、面内方向の滑りやひねり、面間方向の結合のエネルギー等に関する測定ができるようになった。(2)基板と原子層物質の相互作用: SiC基板上に成長させたグラフェンは基板との間に強い相互作用を形成していると言われており、実際にグラフェンの2Dバンドが他の基板(石英、サファイア、シリコン等)に比べて大きく高周波数シフトしている。しかし基板との結合、または強い相互作用に由来するピークは同定されていなかった。本研究では、低振動数ラマン分光及びz偏光測定を用いて、基板との相互作用に由来するラマンスペクトル成分を抽出することに成功した。(3)ヘテロ原子層物質の重なりの評価: MoS2-WS2ヘテロ構造において、同じ材質でありながら異なるフォトルミネッセンススペクトルを持つ2種の構造の低振動数ラマン分光を測定し、構造の違いが電子状態に与える影響を評価した。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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ACS Nano
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