公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
フォノンホール効果は、非磁性絶縁体に温度勾配を与え、それと垂直な方向に磁場を与えたとき、この両者に垂直な方向に温度勾配が現れる現象である。我々は、この現象が大きな全角運動量を持つ重元素によるフォノンの共鳴散乱によることを2014年に示した。その後、2017年にBa3CuSb2O9(BCSO)でフォノンホール効果が報告された。BCSOには、スピン1/2のCuイオンが、蜂の巣状に並んでいるが、大きな全角運動量を持つイオンは含まれていない。これまでの研究で、六角形の中心に付加的なCuイオンの孤立スピンが僅かに存在し、低温での熱伝導率を支配していることが分かっている。本研究では、この孤立スピンがBCSOにおけるフォノンホール効果の鍵であることを示した。BCSOには、電子の時間スケールより遥かにゆっくりとした時間スケールの動的Jahn-Teller歪みがあることが報告されている。この歪みによって、孤立スピンを伴うCu六方晶の伸長が、四重極対称性を有する電荷の再分布をもたらすことを見出した。四極子は、格子歪みに結合することができる。これは、BCSOにおけるスピン-フォノン結合の起源である。このスピン-フォノン結合を通じて、スピンCu六方晶はスピン1/2クラスタによるフォノンのスキュー散乱が可能となる。つまり、孤立スピンを有するCu六方晶の拡張クラスタ多極子こそが、BCSOにおけるフォノンホール効果の起源なのである。このように、BCSOを対象として複数原子に亘る拡張された多極子とフォノンとの結合を評価し、熱流における多極子輸送現象の理論を構築した。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Phys. Rev. B
巻: -
120006731607
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