公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
リーリンは脳の形成と機能調節に重要な分泌タンパク質であり、特定の神経細胞から分泌される。リーリンの受容体は多くの神経細胞に発現し、興味深いことに血清リポタンパク質の受容体と同一(ApoER2とVLDLR)である。我々はリーリンが脂質代謝に関わる可能性を考え、リーリン欠損マウス胎児脳の脂質組成を網羅的に解析した。その結果、リーリン欠損マウス脳では膜リン脂質中の必須高度不飽和脂肪酸(EPUFA、とくにアラキドン酸とDHA)含有量が低下し、これを補償するため合成されるミード酸(C20:3, n-9)量が増加していた。すなわち、リーリンは神経細胞のEPUFA量を上昇させることが強く示唆された。また、リーリンが(ApoEと同様に)脂質を結合してこれを標的細胞に運ぶという仮説をたて、リーリンの脂質結合性を解析した。その結果、脳内在性のリーリンの一部は脂質を結合してHDL様の粒子を形成していることを見いだした。この結果は電子顕微鏡解析でも裏付けられた。すなわち、リーリンは脳内アポリポタンパク質として機能し得ることが示唆された。EPUFAはシナプスの形成や機能に重要なことが知られてお入り、その減少は精神神経疾患の一因とされている。本結果は、リーリンの機能上昇が精神神経疾患を改善につながる可能性を示唆している。近年、リーリンの機能低下(発現低下および分解増加)が精神神経疾患の発症に関与することも多く報告されており、本研究から得られた結果は、精神神経疾患の発症機構の一端をうまく説明できる。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (31件) (うち国際学会 9件)
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