公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本研究課題では、集束超音波と相互作用することで変調する生物発光源を開発し、高精細な発光トモグラフィを実現する基本原理を開拓することを目指した。そのために初年度は、生物発光源と集束超音波の相互作用を検出する装置を自作した。更に、野生型ルシフェラーゼにおいて確認された超音波応答性を増強するために、超音波によって生成されるROSに応答して発光を増加するルシフェラーゼ分子の設計を試みた。しかし、試作した分子のROS への応答性は非常に小さく、実用に足る生物発光源の開発は困難であると考えられたことから、最終年度は、超音波によって生成される圧力波に応答する生物発光源の開発に注力した。その分子設計には細胞内相転移を利用したタンパク質相互作用検出センサーFluoppiの原理を参考にした。Fluoppiにおいて、細胞内に形成される液相転移濃縮体(LPTC: liquid-phase transition condensation)では、高密度に分子が集合することで、生体分子の反応性が変化することや、外部からのせん断応力に対して柔軟にその形状を変化させることが知られている。そこで、超音波の圧力波が発光分子を含むLPTCと相互作用することで、ルシフェラーゼの発光反応に影響を与えることを期待した。ルシフェラーゼと複数のタンパク質相互作用ドメインを含む分子を設計・最適化し、LPTCを形成する発光分子(LPTC発光分子)を開発した。次に、LPTC発光分子を培養細胞に発現させ、様々な周波数の集束超音波を細胞に照射した時、細胞内のLPTCを発光顕微観察したが、LPTCの形態や、LPTCから生成される発光強度の変化は検出できなかった。現在、超音波と相互作用することで変調する生物発光源の開発は道半ばであるが、超音波とLPTC発光分子の相互作用解析系を確立したことで、今後、更なる研究の進展が期待できる。
29年度が最終年度であるため、記入しない。