公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本年度は2つの研究課題について伸展があった。(1)時間変化する音が下丘内でどのように符号化されるか?傍細胞記録・染色法によって標識された下丘神経細胞の形態学的特徴と生理学的性質を比較した。大型抑制性細胞は周波数が時間変化するスウィープ音に対して強く応答を示した。これと対応するように周波数受容野が広く、これを実現するため、樹状突起が下丘の周波数層構築をまたぐように伸びだし、細胞体から樹状突起の遠位部に渡って高密度の興奮性入力を受けていた。この一方、興奮性細胞はスウィープ音に対して様々な応答性を示した。そこで、スウィープ音への応答性と細胞体の空間分布との対応を定量化したところ、下丘中心核周縁部に応答性の高い細胞が集積することが明らかになった。このように、下丘において、スウィープ音は細胞種と空間分布という2重表現によって符号化されることが示唆された。(2)時間変化する音を利用して空間認知するコウモリの聴覚経路はどのように構成されるか?スウィープ音を用いて空間認知するアブラコウモリの下丘に逆行性トレーサーを注入し、前頭皮質から脳幹に至るまでの脳全体の標識細胞の空間分布を三次元再構築した。ここで、この種の聴覚経路は形態学的に記載されていなかったので、組織構築や遺伝子発現から聴覚神経路全体を同定した。注入部位の異なる7例を比較することで、聴覚経路全体の機能局在についての知見を得た。下丘がスウィープ音に対する特殊化を示していた。さらに、終脳において、従来報告されなかった新たな脳領域が下丘に投射することも明らかになった。この領域はナビゲーション、つまり行動の計画に関与する領域であり、コウモリ脳において、「未来」をコードする領域が、「現在」にあたる聴覚知覚を制御する、という意味合いを持っている。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2018 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (3件) 備考 (2件)
J Neurosci
巻: 38 号: 13 ページ: 3318-3332
10.1523/jneurosci.2173-17.2018
Nat Commun
巻: 9 号: 1 ページ: 1-14
10.1038/s41467-017-02501-4
Archives of oral biology
巻: 84 ページ: 145-150
10.1016/j.archoralbio.2017.09.025
Journal of Biosciences and Medicines
巻: 5 号: 08 ページ: 11-35
10.4236/jbm.2017.58002
120006524026
European journal of oral sciences
巻: 125(1) 号: 1 ページ: 44-48
10.1111/eos.12329
The Annals of otology, rhinology, and laryngology
巻: 125(9) 号: 9 ページ: 704-709
10.1177/0003489416646793
https://researchmap.jp/t-ito/