公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
平成29年度は、主にPOLEの生殖細胞系列変異によって生じた大腸腫瘍について、ゲノム、エピゲノム、トランスクリプトームデータをもとに統合解析を行った。その結果、同一患者に発生した腫瘍の中でメチル化関連遺伝子に体細胞変異を伴うと、ゲノムワイドなメチル化異常が生じ、腫瘍細胞はCIMP (CpG island methylator phenotype)あるいはMSI (microsatellite instability)となることが示された。したがってPOLE変異が生ずると、複製過程でのプルーフ校正不全により変異が蓄積しやすくなって腫瘍が生じ、その後に獲得するゲノム変異、あるいはエピゲノム変異により、同じ患者に生じた腫瘍でも腫瘍の性格が異なることが明らかとなった。虫垂原発の腫瘍病変から発生した腹膜偽粘液腫(PMP)の解析では、全ゲノム・トランスクリプトーム解析を実施した。その結果、PMPは通常の大腸がんとは異なる発現プロファイルを持っていた。すなわち、分化した腸吸収細胞で発現するSLC26A3などのマーカーの発現が低下し、盃細胞で発現するTFF3などのマーカーの発現が高いことが確認された。すなわち腫瘍細胞が盃細胞へ分化する細胞から発生したか、腫瘍化したのちに盃細胞への脱分化をおこしたのか2つの可能性が考えられた。発現変化した5176遺伝子を用いたパスウェイ解析の結果では、EMTや炎症関連分子の変化との相関が認められた。全ゲノム解析では、KRAS、GRAS遺伝子の変異の他、TP53、PIK3CA、AKT1遺伝子や、プロテインキナーゼ・シグナルに関わる遺伝子に変異を認めた。これらの結果は、PMPの発生・進展を考えるうえで、有用な情報になるものと期待される。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 3件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 7件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 6件、 招待講演 9件)
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