公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
宇宙環境おいて、ヒトは常に宇宙放射線を被ばくするため、将来の長期滞在に向けて最も関心の高い人体影響は、宇宙放射線被ばくによる発がんと継世代影響である。宇宙滞在において被ばくする放射線の成分は地上と異なり、陽子線、中性子線に加えて、鉄イオンのような重粒子線が含まれるが、その発がんリスクのデータは不足している。我々は、B6C3F1マウスに鉄イオン、シリコンイオン、またはアルゴンイオンを照射した実験群の終生飼育を終了したサンプルについて解析を行った。本研究では、①病理解析を行い各臓器の発がんリスクを求め、さらに、②ゲノム変異解析を行うことでLETにより発がんメカニズムが異なるかを検討し、重粒子線(鉄イオン、シリコンイオン、アルゴンイオン)による、発がんリスクとゲノム変異メカニズムを新たに提示することを目的とする。昨年度は、重粒子線照射後に発生するがんの特徴として、異なる臓器のがんが同時に進行する多重が認められこれまでの自然誘発およびγ線またはX線照射後に発生するがんとは異なる特徴が明らかになった。本年度は、照射後に発生したリンパ腫の病理解析では、免疫染色によりリンパ腫のタイプ(Tリンパ腫またはBリンパ腫)を明らかにした。被ばく時年齢(1週齢、7週齢)と被ばく線量によりリンパ腫の発生率は異なることが明らかになった。特に1週齢被ばくでは、線量依存性にリンパ腫の発生リスクが減少し、固形がん発生のリスクが増加していることが明らかになった。一部のリンパ腫について全エクソーム解析を行い、自然誘発リンパ腫の解析結果との比較から、鉄イオン線照射で誘発されたリンパ腫で特徴的に変異している遺伝子が確認された。解析サンプルを増やして解析を継続している。以上の結果より、重粒子線照射後に発生するがんは病理学的およびゲノム変異の特徴が異なることが示唆された。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Radiation Research
巻: 187 号: 2 ページ: 210-220
10.1667/rr14478.1
巻: 186 号: 4 ページ: 407-414
10.1667/rr14499.1