配分額 *注記 |
8,450千円 (直接経費: 6,500千円、間接経費: 1,950千円)
2017年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2016年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
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研究実績の概要 |
本研究課題では,1. 音の質感認識における「粗さ」に係わる物理量が何であるのか,2. 音の質感認識には音源だけでなく伝送系の質も関係しているのか,そして,3. ヒトが音源と伝送系を切り分けて質感認識を行っているかどうか,全体考察も踏まえ,一つ一つ明らかにしていく. 本年度は,音声の非言語情報(感情と個人性)を質感認識の一つととらえ,課題2と課題3に取り組んだ.まず,雑音駆動型声分析合成系における振幅包絡線情報に関して,音環境(波形雑音や残響)が,音源(音声信号)の非言語情報(個人性と感情)の知覚にどのような影響を与えるか調査した.次に,室内の背景雑音や残響の影響を変調伝達関数でモデル化することによって音源の変調とは独立に制御し,音源の質感に伝送系の変調がどのように影響するのかを検討した.実験では,Schroederの室内インパルス応答を利用した残響環境(残響時間0.1, 0.2, 0.5, 1.0, 2.0秒)と白色性ガウス雑音を利用した雑音環境(SN比 20, 15, 10, 5, 0, -5 dB)と想定し,音源はこれまでと同じ音声データを利用した.残響環境では,話者・感情認識とも残響時間が2秒のときのみ他の条件と有意差があった.雑音環境では,話者認識のときSN比が-5 dBのときのみ他の条件と有意差があり,感情認識のときSN比が0 dB以下のときのみ他の条件と有意差があった. 最後に,これらの結果を俯瞰的に眺め全体考察したところ,極めて劣悪な状況を除く日常的な音環境では,非言語情報(個人性や感情)の知覚は残響や雑音の影響を受けにくいことがわかった.このことから,非言語情報知覚を質感知覚の一つと解釈すれば,音源(非言語情報)と伝送経路(残響や背景雑音)を切り分けて音の質感を認識していると解釈できることがわかった.
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