公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
ニュートリノや暗黒物質が関わる希少事象探索は、宇宙・素粒子の未解決問題を解き明かす鍵となっていると考えられており、神岡地下で進行する極低放射能環境を活用した実験的研究の重要性が高まっている。新しい純化手法の候補として、有機合成分野において近年開発が進んでいるメタルスカベンジャー(金属捕捉材)による吸着法が挙げられる。本研究では、これまで小規模装置で開発を行ってきたシリカゲルにアミノプロピル基を付けたメタルスカベンジャーによる放射性重金属の吸着純化技術をさらに発展させ、十分な純化速度が得られる液体シンチレータ純化装置の製作・稼働を行い、液体シンチレータ検出器における主要なバックグラウンド源に対する除去率を評価する。これまでの研究において、液体シンチレータの主成分であるリニアアルキルベンゼン(LAB)を130 L/h程度で純化する直径10 cmの直管型吸着カラムを製作した。感度波長において9 cm 光透過率は0.24%以内で安定しており、純化してもLABの高い光透過率が維持できることを示した。また、LABに発光剤を添加した液体シンチレータの発光量についても誤差2%の範囲内で有意な変化は見られず、発光性能への影響が十分に小さいことを確認した。放射性鉛除去についてはLABの流量を最適化しても、4回までの循環では目標の90%の除去率が達成できなかった。そこで、吸着カラムの吸着層の厚みを2 cmから4 cmに拡張することでメタルスカベンジャーの使用量を約2倍に増やし、カラムプロセスにおける鉛吸着効率の向上を試みた。その結果、3回の循環によって約90.4±0.4%の除去率を達成できることが分かった。本研究によって、メタルスカベンジャーによる吸着純化は液体シンチレータの成分を変化させずに放射性鉛を除去する実用的な方法であることが示された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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