研究実績の概要 |
標準模型では説明できないニュートリノ質量と宇宙バリオン数非対称性の問題に対する解決策として右巻きニュートリノを導入した拡張模型を検討した。本研究では、TeVスケールの質量を持つ右巻きニュートリノの物理を詳細に検討した。この場合、質量が縮退した右巻きニュートリノを導入することにより共鳴レプトン数生成機構が働くことが知られている。我々はボルツマン方程式を用いた数値解析を用いて、共鳴レプトン数生成機構による宇宙バリオン数非対称性を評価した。特に、鍵となるCP対称性の破れが、地上実験で検証可能な左巻きニュートリノセクターで引き起こされる場合を検討した。 第一の成果として、宇宙バリオン数非対称性の正しい符号を与えるCP対称性の破れのパターンを示した。特に、正しい符号を与えるDirac CP位相とMajorana CP位相の範囲をニュートリノ質量階層性ごとに示した。 第二の成果として、宇宙バリオン数非対称性の生成量とニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊における有効ニュートリノ質量の間の相関関係を示した。特に、宇宙バリオン数非対称性の観測量を説明するためには、有効ニュートリノ質量に制限が付くことを示した。右巻きニュートリノの質量差が大きくなると有効質量に厳しい上限が得られることを指摘した。 本成果については、論文としてまとめarXivへ発表すると共に、査読付き雑誌へ投稿中である。 "Resonant leptogenesis at TeV-scale and neutrinoless double beta decay", by Takehiko Asaka and Takahiro Yoshida, [arXiv:1812.11323].
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