公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
昨年度2月にSACLAにおいて7シフトのビームタイム実験を行った。本年度はこのビームタイム中に得られた2つの結果の解析に多くの時間を割いた。一つはHe原子の多光子イオン化過程の観測である。光子エネルギー40.8 eVのFELを用いてHe原子から生成される光電子を測定したところ、2光子を同時に吸収しHe2+を生成するチャンネル(2PDI)と1光子吸収でHe+を生成した後、2p状態を経てHe2+を生成するチャンネル(S3PDI)があることを見出した。特に、S3PDIチャンネルの光電子生成には3光子が必要であるにもかかわらず、S3PDIの信号強度はFEL強度の2乗に比例した依存性を示す。これはHe+の1s状態と2p状態がラビ共鳴を起しており、この励起に必要な光子が強度依存性に反映されていないためであると考えられる。また、超短パルスレーザーによりCO2分子を非断熱的に配列させ、FELパルスによって生成される光電子の角度分解スペクトルを測定した。ここで、ショットごとにフラグメントイオンの画像から配列状態を評価し、光電子スペクトルの並べ替えを行った。その結果、分子軸の向きとFELパルスの偏光方向を固定した光電子角度分布を得ることに成功した。光吸収後の電子ダイナミクスを考慮した理論シミュレーションと比較したところ、実験で得たMF-PADと理論的なMF-PADはよい一致を示しており、本手法の妥当性を確認できた。上記の解析と並行して、本年度6月および2月にSACLAでビームタイム実験を行った。特に2月の実験では、様々な条件下で分子配列の度合を調べ、FELと光学レーザーとでレイリー長が異なることが配列度を下げる要因となることを明らかにした。また、代表的な有機金属化合物であるフェロセン分子では、Fe 3p光電子が5員環の励起状態と強くカップルすることを示唆する結果を得た。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 8件、 招待講演 2件)
Journal of Physics B: Atomic, Molecular and Optical Physics
巻: 52 号: 6 ページ: 065602-065602
10.1088/1361-6455/ab0580
Journal of Physics Communications
巻: 2 号: 11 ページ: 115015-115015
10.1088/2399-6528/aaedd3
巻: 51 号: 22 ページ: 225601-225601
10.1088/1361-6455/aae578
巻: 51 号: 7 ページ: 075601-075601
10.1088/1361-6455/aab257