公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本研究の目的は、蛇紋岩を母岩とする温泉環境を冥王代類似環境と想定し、観測に基づいて蛇紋岩-水反応系における炭素の循環を明らかにすることである。本年度は陸上の蛇紋岩温泉である白馬八方温泉(長野県)において、以下の研究を実施した。2018年10月の白馬八方温泉調査で採取した遊離ガス中のCOおよびCO2濃度を測定した結果、検出限界以下であった。もしメタンが観測地点と同じ環境下で生成されたとすると、COおよびCO2はメタンの炭素源とは考えにくい。揚湯パイプに付着した炭酸塩について、14C含有量の測定を行った。前年度は酸処理を伴う手法を用いたが、試料中に含まれる微量な硫黄化合物がグラファイト化を阻害するという問題があった。そこで本年度は炭酸塩試料を元素分析装置で燃焼させ、生成したCO2ガスをグラファイト化させた。東京大学大気海洋研究所が所有する加速器質量分析計(AMS)を用いて測定した結果、炭酸塩試料中に検出可能な量の14Cが含まれていることが分かった。また、メタンガスの14C含有量も測定した。海洋研究開発機構のメタン燃焼ラインを用いてCH4をCO2に変換した後、グラファイト化およびAMS分析を行った。その結果、CH4の14C含有量は検出限界付近であることが判明した。14Cは大気中で生成され、大気中の炭素との交換が遮断されるような地下圏では14C濃度が放射壊変によって徐々に減少する。つまり今回の結果は、白馬八方温泉のメタンの炭素源が14Cに富んだモダンな炭素(例えば、大気CO2や土壌中の生物由来炭素)ではないことを示している。14Cに枯渇した古い炭素源の候補として、マントル起源CO2や太古の熱水循環時に沈殿した炭酸塩などが考えられる。今後、蛇紋岩-水反応系の炭素循環を読み解く上で、地球深部と表層の関わりを理解する必要がある。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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