研究実績の概要 |
本研究では、東北地方太平洋沖地震による複雑な地震活動の時空間変化について、本震およびその後の余効変動による応力変化の推定等をもとに、複数考えられる要因を切り分けて評価し、震源域周囲の長期的な地震発生ポテンシャルの評価に役立てる。本年度は、プレート境界での繰り返し地震の抽出を2018年まで進めた。さらに、東北沖地震直後の岩手県釜石沖の地震活動をmatched filter法を用いて調べ、地震直後の小地震の活動および繰り返し地震の発生状況を明らかにした(奥田・他、地震、2018)。これらは、東北沖地震後の余効すべりの状況の把握にも役立つものである。東北沖地震による内陸の地震活動の関係については、前年度得た結果について考察を行い、国際学会で発表を行なった(Uchida et al., AOGS, 2018)。また、その際に応力計算を担当している研究協力者との議論も行なった。これまでのところ、東北沖地震後の内陸の地震活動は、宮城県から山形県にかけての東北沖地震による大すべり域の西側では、逆断層場である東北地方に、東北沖地震およびその後の余効変動により引っ張りの力が加わることにより、地震活動が抑制されていると結論づけられる。しかし、時間変化の特徴と応力変化の対応については、定量的な比較には至っていないため、研究協力者による詳細な応力計算を待って、地震活動に与える影響の切り分けを行い、論文として公表したい。また、本年度は関東地方の地震活動について、フィリピン海プレート上での周期的なスロースリップと内陸浅部地震の活動の関係をしらべ、流体の移動が地震活動に大きく影響しているという結果も得た。(Nakajima and Uchida, Nature Geoscience, 2019)。
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