研究実績の概要 |
充填トリジマイト型酸化物は、アルミニウム(Al)やストロンチウム(Sr)、酸素(O)といった自然界に豊富に存在する元素により構成されるとともに、酸素四面体が3次元的にネットワーク構造を組むという特徴的な結晶構造を有す、熱的・化学的安定性に優れた物質群である。本研究では最近、充填トリジマイト型酸化物Ba1-xSrxAl2O4が特殊な格子振動状態(構造揺らぎ)を示し、それが広い温度・組成範囲で見られることを発見した。すなわち、10 K付近といった低温から800 Kという高温まで異常に大きな熱振動が観測され、また元素置換量の増加に伴って、この熱振動が増強されることを見出した。本課題では、充填トリジマイト型酸化物AB2O4 (A=Ba, Sr; B=Al, Fe)に注目し、この特殊な格子振動状態と伝導電子が共存する系の創成に取り組んだ。 (1) BaAl2O4で見られる構造不安定性が、充填トリジマイト型の類似構造をもつ化合物BaSrFe4O8においても確かに見られることを明らかにした。BaSrFe4O8に対し放射光粉末 X線構造解析を行ったところ、Ba, Sr原子とO1原子において大きな温度因子が見られることがわかり、c軸に沿った原子変位の存在が示唆された。また透過型電子顕微鏡(TEM)観察においては、a軸に沿った変調構造が見られ、Ba, Sr原子とO1原子の原子変位に起因すると考えられる。つまり、BaSrFe4O8においても4面体の連結角度に関連した構造不安定性が確かにあり、それが変調構造として発現していることがわかった。 (2) BaFe2O4に対するアンモニア窒化反応を行い、Feをベースとした充填トリジマイト系の構造評価と複合アニオン化を試みた。反応条件を検討し、アンモニア窒化前後でバンドギャップに変化が見られることがわかった。現在、詳細を検討中である。
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