配分額 *注記 |
7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2018年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2017年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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研究実績の概要 |
脳血管疾患は、本邦死因の4位となる発生頻度の高い疾患である。しかしながら、脳血管疾患の多くを占める脳梗塞により、脳が大きく損傷した場合、失われたニューロンの機能を補填するのに有効な治療法は未だに確立されていない。脳血管疾患は認知症と並び、本邦で要介護者を生む最大の要因となっている。従って、「脳梗塞により破綻した脳の機能をいかにして再構築し、修復するのか?」は、超高齢化社会において重要な問題である。脳梗塞が起こると、梗塞巣の中心ではニューロンの多くが死滅する。一方、梗塞巣の周辺はニューロンが生死の境にある領域と考えられており、臨床医学的には、梗塞巣の周辺での細胞死を抑えることが、予後を改善するのに極めて重要である。
申請者らは、脳梗塞後の神経細胞でのシナプスの再構築の過程を理解するために、梗塞巣の周囲で発現が変動する遺伝子の同定が必須であると考えた。そこで脳梗塞モデルマウスを用いて、手術2時間後に発現が変化する遺伝子を網羅的に探索した。変化する遺伝子リストのトップにある転写因子Npas4は、虚血部位を囲むように速やかに誘導され、ニューロンの生存を促進することを見出した。興味深いことに、Npas4は健常脳では、神経活動により発現が誘導され、シナプス形成を促進することを、申請者ら(Cell Reports, 8, 843, 2014)やMichael Greenberg博士ら(Cell, 157,1261, 2014)が明らかにしていた。そこで本研究では、健常脳から梗塞脳への適応回路シフトにおける転写因子Npas4の動作機構を明らかにすると同時に、その下流遺伝子を新たに同定した。
従って本研究は、高次脳機能障害の病態や脳損傷後に起こる機能代償のメカニズムについて、神経回路レベルでの理解に結び付き、疾患の病態を改善・回復させるための科学的エビデンスに基づいた合理的な治療法の開発につながると期待できる。
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