公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
動物は視覚・聴覚などあらゆる感覚受容を駆使して周囲の状況を認識し、何らかの行動を出力する。本研究では、動物モデルとして熱帯魚ゼブラフィッシュを採用し、聴覚刺激に対する逃避行動の変化を行動可塑性として研究した。ゼブラフィッシュ稚魚にホワイトノイズとよばれる混合音を聞かせると、突然の水音を聞いた時にとる逃避行動が低下する「環境適応」が実験室レベルで再現できる。この実験系を用いて、聴覚刺激後に時間が経過すると、行動可塑性が元に戻るので、その過程を経時解析した。具体的には聴覚刺激後、どのくらいの時間が経過するとリセットされて動物の逃避行動が回復するのかを逃避行動の動画記録で解析した。さらに、そのリセットが起こる過程で脳神経回路にどのような変化が起こるかを生体内イメージングで調べた。行動可塑性の際にはマウスナー細胞という逃避をトリガーする神経細胞の細胞表面に存在する抑制性シナプスの1タイプであるグリシン作動性シナプスにおいて、グリシン受容体タンパク質のシナプス部位への集合が起こることから、リセットの際には逆にグリシン受容体タンパク質の細胞膜上での側方拡散が起こると予想されたので、その分子機構の解析を進めた。行動可塑性の際にはグリシン作動性シナプスにおいて、その足場タンパク質であるゲフィリンがリン酸化されるので、リセットではゲフィリンの脱リン酸化に注目し、脱リン酸化酵素(プロテインホスファターゼ)の特異的阻害剤、具体的にはプロテインホスファターゼ1阻害剤、プロテインホスファターゼ2A阻害剤、プロテインホスファターゼ2B阻害剤、プロテインホスファターゼ2C阻害剤をゼブラフィッシュ稚魚に作用させて、行動可塑性やリセットが影響を受けるかを解析した。脱リン酸化反応が行動のリセットに関与するということが明らかになり、ホワイトノイズによる突然の水音を聞いた時の逃避行動の変化の全容の理解に近づいた。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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