公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
昨年度前倒しで開始した、腸上皮幹細胞(ISC)の幹細胞生低下機構研究を継続して行った。その結果、インターフェロンシグナルを負に制御=抑制する転写因子であるIRF2を欠損するマウスにおいて、ISC数が著しく減少していることが判明した。定常状態においては、少ないISCでも腸の恒常性を維持しているが、5-FUを投与して腸を損傷させ強制的かつ急激に再生を促すと、IRF2欠損マウスで再生不全が顕著であった。同様の現象は腸上皮特異的IRF2欠損マウスでも観察された。また低濃度poly(I:C)を慢性的に野生型マウスに投与してもISCの幹細胞性低下と、それに伴うオルガノイド形成不全が観察されたが、同じ実験をIFN受容体欠損マウスで行うとISCの機能は正常であった。これらの結果から、腸上皮における慢性的IFNシグナルが幹細胞性低下に繋がることが明らかになった。また、網羅的遺伝子発現解析を行ったところ、poly(I:C)を慢性的に投与した野生型マウスでは、分泌前駆細胞やパネート細胞関連遺伝子の発現が亢進していた。この結果と一致して、IRF2欠損マウスで未熟なパネート細胞が増加していた。これらの結果は、慢性的IFNシグナルが幹細胞性を低下させるだけでなく、分泌細胞系列への分化の引き金を引くことを示唆していた。IRF2が恒常的にIFN誘導遺伝子の上流に結合してそれら遺伝子の発現を調節していることも判明し、IRF2は分泌細胞系列への分化を制限することによって幹細胞性を維持していると思われた。現在、論文投稿後のrevision実験として、慢性ウィルス感染症モデルやヒトオリガノイドを用いて、IRF2機能の生物学的意義・重要性をさらに検証している。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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http://www.tmd.ac.jp/mri/bre/index.html