研究領域 | 脳タンパク質老化と認知症制御 |
研究課題/領域番号 |
17H05702
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
生物系
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
内山 圭司 徳島大学, 先端酵素学研究所(次世代), 准教授 (60294039)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2018年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2018年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2017年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | プリオン病 / 異常プリオン / 抗プリオン活性 / 神経変性疾患 / 抗プリン活性 / プリオン / 細胞内小胞輸送 |
研究実績の概要 |
本研究では、Advanced DMEM (AD) 培地に含まれる抗プリオン活性化合物を同定し、生体におけるその有効性を検証した。また、新たなプリオン病治療ターゲットおよび抗プリオン物質の同定を目指し、その作用機序の解明に取り組んだ。 AD培地は、通常のDMEM培地に15種類の化合物が添加されたものであるため、各々の化合物をDMEMに加え、これらの抗プリオン活性を解析した結果、エタノールアミン(EA)のみがAD培地同様の抗プリオン活性を示した。また、マウスにおけるプリオン感染実験において、EAを飲水により継続的に投与した結果、非投与群と比較して感染初期での異常プリオン蓄積が有意に抑制され、発症遅延および延命効果が確認された。 次に、EAが示す抗プリオン活性メカニズムの解明に取組んだ。ホスファチジルエタノールアミン合成に対するEAの影響を確認するため、CDP-エタノールアミン経路の律速酵素であるPcyt2発現量を解析したところ、EAによりPcyt2発現が低下していた。そこで、Pcyt2発現低下と抗プリオン活性との関連を確認するため、Pcyt2発現を低下させることが報告されている25-ヒドロキシコレステロール(25OHC)を添加したところ、Pcyt2発現低下に加え、異常プリオンの減少も確認された。また、コレステロールからの25OHC合成を担うCH25Hの過剰発現も、Pcyt2発現低下および異常プリオン減少を引き起こすことが確認された。さらに、EA添加はCH25H遺伝子の発現量を増加させることも見出した。これらの結果から、エタノールアミンは、CH25H発現上昇を介し25OHCを増加させることにより異常プリオン減少を引き起こしていると考えられた。また、25OHCさらに、CH25H活性化が新たなプリオン病治療法開発のターゲットとなり得ることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Advanced DMEM培地中の抗プリオン活性物質の同定を行い、唯一エタノールアミンが抗プリオン活性を示すことを明らかにできた。また、マウスにおけるプリオン感染実験において、エタノールアミンが異常プリオン蓄積を抑制し、発症遅延、延命効果を示すことも確認できた。さらに、その作用機序を解明において、25-ヒドロキシコレステロールを介したものであることを示した。これらは当初計画に従い得られた結果であり、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度、Advanced DMEM培地中の抗プリオン活性物質の同定を行い、エタノールアミン(EA)が抗プリオン活性を示す唯一の物質であることを明らかにした。本年度は、EAが抗プリオン活性を示す作用機序を明らかにし、新たなプリオン病治療ターゲットを同定しさらに、新規抗プリオン活性物質を同定する。 現在、エタノールアミンが、コレステロールからの25-ヒドロキシコレステロール合成を担うCH25H (cholesterol 25-hydroxylase)の遺伝子発現を上昇させることを見出している。また、CH25H過剰発現が、異常プリオン減少を引き起こしさらに、25-ヒドロキシコレステロールもまた抗プリオン活性を示すことを明らかにしている。これらのことから、エタノールアミンは25-ヒドロキシコレステロールをかいして抗プリオン活性を示していると考えられる。そこで、25-ヒドロキシコレステロールの作用機序を解明することで、さらに下流の作用機序を明らかにする。25-ヒドロキシコレステロールは、Liver X受容体、Ebi2、Estrogen受容体などのligandとして作用すること、また、SREBP活性化を抑制することが報告されている。そこで、これらを介したシグナルが抗プリオン活性に関与しているのか、アゴニストやアンタゴニスト、阻害剤、関連因子の過剰発現やsiRNAによるノックダウン実験により解析し、抗プリオン活性に関与する経路を明らかにする。そして、シグナル経路同定後、より下流において抗プリオン活性を刺激することができる化合物やターゲット因子を同定し、25-ヒドロキシコレステロールに加えこれら新規化合物の生体における有効性をマウスにおけるプリオン感染実験において検証する。
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