公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
脳の発達や機能、精神神経疾患の病態には、ミエリン(髄鞘)による神経伝達の調節が深く関わっている。ミエリンは神経軸索を取り巻くリン脂質の層を指し、跳躍伝導を可能にしている。ミエリンを構成する細胞はグリア細胞の中でもオリゴデンドロサイト(OL)が担当している。脳梁などの白質に存在するOLの特徴は、細胞体が一列に並んだビーズ状の形態をとることである。この一列に規則的に並んだ白質OLがどのように形成されるのか?そもそも、この規則的な配列にどのような意義があるのか?に対する明確な解は現時点でない。この解の一端として、発生のどの段階で細胞ビーズが完成するか、ビーズ内の細胞はミエリン形成能において均一か、OLがビーズ状になり密集していると隣接するOL同士のミエリン形成が物理的に干渉し合わないか、という学術的「問い」を設定して解析を進めてきた。OLの発生研究は脊髄や大脳皮質で盛んに行われてきたが、白質OLが美しく規則的に配列することにどのような意味があるのかについての研究は皆無である。研究の2年間では、①発生のどの段階で一列に並んだ細胞ビーズが完成するか、②一列に並んだ細胞はすべてミエリン形成可能なのか、③OLがビーズ状に密集することで隣り合うOL同士のミエリン形成が物理的に干渉し合わないか、という3つの「問い」を設定した。それぞれの「問い」に対して単一の切片で20種類以上の抗体染色を可能とするMultiplex染色法、SBF-SEMを用いた白質微細構造の3D再構築を駆使して以下の答えを得た。①生直後はランダムに配列しているOLが徐々に「整列」し、生後7日目からはっきりとした細胞ビーズができる、②細胞ビーズは殆どが成熟OLで構成されミエリン形成可能だが各々の成熟OLは性質が異なる、③細胞ビーズの各OLは細胞体周囲の軸索よりもむしろ遠隔の軸索をミエリン化する事を明らかにした。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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