配分額 *注記 |
7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2018年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2017年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
|
研究実績の概要 |
EGFR変異は日本における肺腺がん症例の約50%において認められ、その治療にはEGFR-TKIであるゲフィチニブが主に用いられる。ゲフィチニブによる殺腫瘍細胞効果は非常に高いが、大半の症例において治療後約1年程度で耐性を獲得する。耐性機序の5-20%はMETチロシンキナーゼの増幅が原因であり、過剰発現したMETがErbB3を介してPI3K-Akt経路を活性化するバイパス経路を形成することにより耐性を獲得するとされている。本研究は、MET増幅によるゲフィチニブ耐性機構の数理モデルを構築して薬剤耐性機構の全体像を明らかにすることを目的として行った。 EGFR変異を有する肺腺がん細胞株HCC827がMET増幅によりゲフィチニブを獲得した亜株HCC827-GR5および-GR6細胞における知見をもとに、EGFR, ErbB3, METに着目したゲフィチニブ耐性の生化学的反応を常微分方程式により記述し数理モデルを作成した。反応のシミュレーションを行ったところ、METの過剰発現によりErbB3のリン酸化が亢進するという既報と一致する結果を得た。一方で、METはErbB3の100倍程度存在し、METがErbB3を介してPI3K-Akt経路を活性化するという分子機構は、薬剤耐性獲得の観点からは非効率的であることが予想された。 そこでEGFR, ErbB2, ErbB3に対するマルチキナーゼ阻害剤AZD8931をHCC827およびそのゲフィチニブ耐性株に投与したところ、HCC827は死滅したのに対しゲフィチニブ耐性株はEGFRとErbB3の両方が阻害された場合においても生存した。またHCC827-GR6細胞においてErbB3をノックダウンしたが、ゲフィチニブ感受性には影響を与えなかった。これらの結果から、MET増幅によるゲフィチニブ耐性機構においてErbB3の寄与は限定的であることが示唆された。
|