公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
概日リズムは、生物に備わった約24時間周期のリズムであり、睡眠覚醒、体温、心拍、高次脳機能を制御する。この生理現象は、リミットサイクルと呼ばれる、摂動に対してロバストに周期活動を継続するダイナミクスにより形成され、mRNAや蛋白質の遺伝子発現自体も振動することから、数理的解析が多くなされてきた。mRNA量の発現振動機序は、時計遺伝子による転写制御を中心に解明が進んできたが、近年は、mRNA分解等の転写後調節の重要性が注目されている。そこで、本研究課題では、poly(A)鎖分解酵素CCR4-NOT複合体とRNA結合蛋白質BRF1に着目し、数理モデルを駆使することで、概日リズム制御におけるmRNA分解の重要性を明らかにすることを目的とした。我々はこれまでに、BRF1がCCR4-NOT複合体をリクルートすることにより誘導されるPer2 mRNAの分解が、Per2遺伝子の発現振動形成に重要であることを解明した。さらに、CCR4-NOT複合体サブユニットCnot1ヘテロ欠損マウスは概日リズム時間の延長を呈することから、mRNA分解が個体の概日リズム制御に関わることも示した。平成30年度は、BRF1を全身の概日リズムを制御する視交叉上核からノックアウトした結果、本マウスも概日リズム時間の延長を呈したことから、BRF1も個体における概日リズム制御に関わることを示した。また、RNA-seqとRIP-seqの結果、CCR4-NOT複合体とBRF1がPer2のみならず複数の時計遺伝子を標的として分解することを明らかにした。さらに、BRF1が自身のmRNAを標的として、自らの発現量を振動させるとともに、Per2等の標的mRNAの分解を制御するモデルを、時計遺伝子の転写による発現振動制御モデルと融合させ、転写とmRNA分解のクロストークによる精密な概日リズム制御の数理モデルを構築した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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