公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
昨年度は、MoTe2やPbTaSe2といった、新規トポロジカルファンデルワールス結晶および候補物質の劈開試料を用いて、空間反転対称性の破れた物質における固有の整流特性である非相反電荷輸送現象の研究に取り組んだ。本年度は、上述した磁場下非相反電荷輸送現象の研究をさらに推進し、非相反伝導現象と電子バンドの幾何学やトポロジーとの関係性の解明に取り組んだ。特に、極性構造を持つ低温相がタイプⅡワイル半金属であることが知られているトポロジカルファンデルワールス結晶MoTe2において、電子バンドの幾何学やトポロジーに起因した非相反伝導の新しい機構の可能性を見出した。具体的には、昨年度集中的に研究した縦伝導だけでなく、横伝導(ホール効果)にも着目し、MoTe2において、磁場と電流が垂直な配置では非相反縦伝導が、磁場と電流が平行な配置では非相反横伝導(非線形ホール効果)が、極性構造を反映して生じることを明らかにした、さらに、非相反縦伝導に比べて、非相反横伝導の大きさが数倍大きいことを発見した。このことは、非線形伝導の微視的機構の解明に重要な知見であると考えられ、線形伝導と非線形伝導度の相関の解析等を行うことで、観測された非相反伝導が、傾いた線形バンド分散というタイプⅡワイル半金属に特有の電子バンドの幾何学や特殊な散乱機構で説明できる可能性が示唆されている。極性構造に起因した非相反電荷輸送は、これまで、磁場を印加した際に生じる、スピン分裂バンドの特徴的歪みの効果が主な起源として知られているが、本研究で観測された巨大な磁場下非線形ホール効果は、トポロジカル物質における新しい機構の非相反電荷輸送の可能性を示したという点で意義があると考えられる。
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Science Advances
巻: 6 号: 13
10.1126/sciadv.aay9120
Nature
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Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
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Nano Letters
巻: 18 号: 11 ページ: 6789-6794
10.1021/acs.nanolett.8b02647