公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
ワイル半金属TaAsとNbAsの大型単結晶を合成して50テスラまでの強磁場下で電気抵抗率を測定して量子振動の位相を解析することにより、スピン分裂したバンドが1つまたは2つ交差した状態のランダウ準位について研究を行った。その結果、ワイル点を1つ含んだ系では磁場方位を変えてサイクロトロン極値軌道面をワイル点から離していくと量子振動のピークが分裂していくことを発見した。これはワイル粒子が周回運動する際にスピンがつくる立体角が、スピンと運動量の結合方向(カイラリティ)に依存して異なることによるベリー位相の差をランダウ準位の分裂として検出したものと考えられる(論文作成中)。また、カイラリティの異なる2つのワイル点を囲んだ場合にはベリー位相はゼロになるものの、量子振動の位相はワイル型分散を反映して複雑な磁場方位依存性を示すことを観測した。この原因について、異方的な形状のフェルミ面で磁場方位に依存して変化する「極値軌道面とワイル点ペアとの相対的な位置関係」に基づいて議論し論文発表した。次に、ノーダルライン半金属PbTaSe2についてTa核の核四重極共鳴法測定を行いその超伝導状態について研究を行った。核スピン・格子緩和時間の測定からはs波超伝導状態を示唆する結果が得られたものの、超伝導ギャップの大きさはBCSモデルよりも有意に小さいものであった。これは複数あるフェルミ面の中でも電子間引力の弱いTa-5d軌道により構成されたフェルミ面の超伝導状態を優先的に観測したことを示唆しておりマルチバンド超伝導状態の特徴をとらえたものである。さらにノンシンモルフィックな結晶構造を持つ磁性半導体単結晶の合成にも成功し、0.3テスラの磁場で電気抵抗率が数千分の1に減少する巨大な負の磁気抵抗効果を観測した。こちらは従来の理論では説明できない巨大応答電子物性であり、今後の研究の進展が期待される
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2021 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (32件)
Phys. Rev. B
巻: 101 号: 4 ページ: 045135-6
10.1103/physrevb.101.045135
Physical Review B
巻: 102 号: 21 ページ: 214504-214504
10.1103/physrevb.102.214504
JPS Conf. Proc.
巻: 30 ページ: 011016-011016
10.7566/jpscp.30.011016