配分額 *注記 |
7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
2019年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2018年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
|
研究実績の概要 |
本研究では「電子相関」が強いd電子系における「スピン軌道相互作用」に由来する異常電子相の制御を目指した。具体的には、スピン軌道相互作用により特異なバンド構造を持ち、type-II Dirac電子状態が生じている層状MTe2(M=Ni、Pd)におけるディラック点のエネルギー準位の制御とその観測を行った。 ディラック電子系においては、フェルミ準位近傍にディラック点が存在しているときに、直流伝導度などに異常が観測される。本研究ではディラック点のエネルギー準位をフェルミレベル近傍に制御することを目的として、NiTe2とPdTe2の固溶系Ni1-xPdxTe2の単結晶育成を行った。NiTe2とPdTe2では、ディラック点はほぼ同じ波数(k)空間の位置のフェルミレベル以上の約+0.1eV、フェルミレベル以下の約-0.5 eVに位置しており、これらの固溶系ではディラック点をフェルミレベル近傍に制御可能であると考えた。 Ni1-xPdxTe2のPd濃度x=0, 0.05, 0.10の角度分解光電子分光測定を行ったところ、x=0 (NiTe2) ではフェルミレベル直上に位置していたディラック点は、x=0.05ではフェルミレベル以下の約-50meV、x=0.10では約-100meVへと、系統的にフェルミレベル以下のエネルギー位置に沈み込んでいくことを解明した。これは、当初の予想のとおり、ディラック点のエネルギー準位が化学的元素置換により制御可能であることを示している。Niサイトに置換されたPdは、Niよりもd電子を過剰に内包しているため、母物質のNiTe2に電子を供給することになる。そのため、Pd置換効果はNiTe2本体のフェルミレベルを上げ、相対的にディラック点がフェルミレベル以下にシフトしたと考えている。
|