配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2019年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2018年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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研究実績の概要 |
2020年度は、二次イオン質量分析計による隕石中の炭酸塩鉱物に対するMn-Cr年代測定の技術開発を行った。具体的には、分析に用いる新しい標準試料の室内合成を試みた。これまでに合成されたMn, Cr含有炭酸塩鉱物はそれらの元素の濃度が不均一であった。また、本研究の当初計画では天然に産出する炭酸塩鉱物にMn, Crをイオン注入する予定であったが、イオン注入では必然的にMn, Crの濃度に深さ方向の分布ができてしまう。上記の問題を解決するため、本研究では炭酸塩に極めて過飽和な水溶液から非晶質炭酸塩鉱物を合成し、その試料を加熱または加圧することでCa炭酸塩(カルサイト)を結晶化させる実験を行った。非晶質炭酸塩は炭酸塩鉱物に不適合な元素も比較的多量に取り込むことができる。この実験により、MnやCr, Fe, Mgなどの元素を含むカルサイトの合成に成功した。非晶質炭酸塩を加熱して作製したカルサイトは粒子径が1ミクロン以下と著しく小さいため、二次イオン質量分析計の分析には不向きであった。一方、加圧により作製したカルサイトは数十ミクロン程度と比較的粒子径が大きく、分析に用いることができることがわかった。加圧した試料では、添加した元素の濃度がおおよそ10%程度の範囲で均質であり、年代測定の標準試料となりうることもがわかった。プレリミナリーな測定結果からは、Feをカルサイトに加えることで、二次イオン質量分析計におけるMn, Crの感度が変化することが示唆された。これは、隕石中の炭酸塩の鉄含有量によっては、年代測定の結果に影響がでる可能性があることを意味する。最後に、Mgを添加すると、カルサイトへ結晶化する反応速度が著しく遅くなるため、Mgを多量に含む炭酸塩鉱物の合成は困難であることがわかった。そのため、現時点ではMg, Ca炭酸塩(ドロマイト)の合成は困難であり、今後の課題となった。
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