公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
昨年度に続き、熱水-岩石-海水燃料電池モデル実験系を用いて熱水系で生じる電気エネルギーの生成ポテンシャルの推定を行った。また、地球海洋において、人工電極を電気エネルギーを供給するモデル環境場として、潜在的な電気利用微生物活動を探索する実験を行い、電極からの電子供給依存的に優占し、電気エネルギー利用が示唆される複数の新規微生物集団を見出した。まず、昨年度に続く常温常圧条件での検討から、硫化鉱物表面での電気化学反応を介した硫化水素イオン酸化と酸素還元の共役で、独立栄養微生物集団の活動を支えうるエネルギー密度の自発的な電気エネルギー生成反応(100-300 nW/cm2)を確認した。この結果から、電気エネルギーを利用する独立栄養微生物活動(電気合成活動)があれば、当該熱水環境においては電気エネルギーに支えられた生態系が存在し得ることが示された。また、カソードの酸素還元反応の過電圧が電力生成反応を律速していることが示唆された。一方で、上記以外の電子供与体・受容体の検討を行うために昇温昇圧条件での実験を試みたが、高温高圧条件下で電気化学測定を行う上での技術的課題を解決できず、実験の実施に至らなかった。また、様々な水準でカソード分極させた炭素繊維電極のセットをモデル電気エネルギー供給環境場として海中に設置し、潜在的な電気エネルギー利用微生物活動を探索する現場集積培養実験を行い、深海熱水域および沿岸域の複数のサイトにおいて、電気エネルギー供給依存的な特定微生物集団の集積が確認された。集積産物のメタゲノム・メタトランスクリプトーム解析から、ガンマプロテオバクテリア綱に属する少なくとも4つの未知の電気合成微生物候補の系統と、それらの電気合成代謝を担うと示唆される新規電子伝達機構の分子情報を見出すことに成功し、未知微生物群によって海洋環境中で電気合成活動が行われていることが示唆された。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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