研究実績の概要 |
PBHのレビュー論文 (Carr, et al, arXiv:2002.12778)を発表した。この論文により10の9乗グラムから10の17乗太陽質量までのPBHの存在量について観測からの上限値を報告した。Serpico, et al, arXiv:2002.10771において、PBHはその外にコールドダークマター(CDM)のハローを必然的に持ち、その系に宇宙のバリオンが宇宙論的に降着することを初めて指摘した。Planck衛星による宇宙マイクロ波背景放射の偏光観測を用いると、その降着円盤から放射される光を制限することになり、10の3乗倍から10の4乗倍の太陽質量の重さを持つPBHの存在量に、CDMの量の1億倍以下という厳しい制限が得られた。Matsubara, et al, arXiv:1909.04053において、宇宙初期にPBHのクラスタリングの問題を検討した。観測から示唆されるように、大スケールの非ガウス性が無視できるほど小さい時は、そのクラスタリングも無視できるほど小さいことが明快に示された。Inomata, et al,2019 (arXiv:1904.12879とarXiv:1904.12878)により、PBHを作る小スケールの宇宙初期の密度ゆらぎ(曲率ゆらぎ)が必然的に2次的な原始重力波を作り出すシナリオにおいて、宇宙初期の物質優勢から放射優勢への移行が、標準的な指数関数的な移行より速いメカニズムで進む場合は、2次的重力波が多く作られ、将来観測で検出可能であることを指摘した。Nakama, et al, arXiv:1905.04477により、PBHを生成する小スケールの曲率ゆらぎが存在する場合、同時にCDMによるUltra-Compact-Mini-Halo (UCMH)が作られることが示され、それを将来のパルサータイミング観測で検出できる可能性を指摘した。
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