公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
極長鎖脂肪酸の産生を担う脂肪酸伸長酵素Elovl1の遺伝子欠損はマウスの食道においてアシルセラミドの量の低下を引き起こした。しかし,この遺伝子欠損はマウス食道に対して明確な形態異常を引き起こさなかった。また,本年度,アシルセラミドがヒトの食道にも存在する可能性を検討したが,ヒトには存在していなかった。一方,口腔においてはマウス,ヒト共にアシルセラミドが存在していた。そこでアシルセラミドの口腔でのバリア形成における役割を調べるためにElovl1変異マウスに対して色素透過性実験を行なったところ,野生型マウスに比べて色素の高い浸透が見られた。このことから,アシルセラミドが表皮だけではなく,口腔においてもバリア形成に働くことが示唆された。昨年度,ELOVL1遺伝子の変異がヒトにおいて皮膚魚鱗癬だけでなく,痙性麻痺と高周波難聴を含む複数の神経症状を引き起こすことを報告した。しかし,ELOVL1欠損が脂質組成や脳内の詳細な病理学的変化に及ぼす影響は不明のままであった。そこで本年度は,ヒトELOVL1欠損症のモデルとして,Elovl1変異マウスを解析した。このマウスは生後生存率の低下を示し,一部のマウスは驚愕てんかんで死亡した。このマウスの脳ではガラクトシルセラミド,スルファチド,スフィンゴミエリン,セラミドなどのスフィンゴ脂質の鎖長が著しく短くなっていた。また,ミエリンの形成や安定性に重要なガラクトシルセラミドの量が減少しており,ガラクトシルセラミド合成酵素Ugt8aの発現が低下していた。Elovl1変異マウスの脳梁を電子顕微鏡で観察したところ,大径軸索を中心にミエリン厚の低下が認められた。さらに,行動実験では,運動協調性の低下や高強度の音に対する驚愕反応の低下などの障害が認められた。これらの結果は,ELOVL1変異患者の神経症状の分子機構を解明する手がかりを与えた。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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