研究領域 | 植物の成長可塑性を支える環境認識と記憶の自律分散型統御システム |
研究課題/領域番号 |
18H04778
|
研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
野田口 理孝 名古屋大学, 高等研究院(農), 助教 (00647927)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2019年度)
|
配分額 *注記 |
10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
2019年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2018年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
|
キーワード | 植物 / 長距離シグナル伝達 / 移行性RNA / 環境応答 / 接ぎ木 / 接木 |
研究実績の概要 |
植物が外界からの環境刺激に対し、個体の発生・成長様式を適応させる手段の一つとして篩管を介した長距離シグナリングが知られる。しかし、篩管を介して長距離輸送されるシグナル様分子は多数同定されるものの、その多くは機能未知であり、中でもRNA分子については理解が進んでこなかった。そこで本研究では、全身移行性のRNA分子の機能に迫ることを最終ゴールとして、接木実験により全身移行性のRNA分子を網羅的に同定し、その配列特徴を調べ、生物的機能への考察を深めることを目的とした。 シロイヌナズナと同アブラナ科のルベラナズナの芽生え接木を行い、ルベラナズナの組織からシロイヌナズナに由来する全身移行性RNA分子を同定した。全身移行性RNA分子は篩管を通って運ばれると考えられており、その方向性は光合成を盛んに行う成熟したソース葉から地上部や根の成長点と言われている。本研究ではシロイヌナズナの全身移行性RNA分子を同定することが目的であるため、シロイヌナズナの地上部をルベラナズナの根に接木した。接木部位が完全に接合して物質の送達が行われるようになった接木後2週間以降にサンプリングを行った。ルベラナズナの根からRNAを抽出し、RNAシークエンシングを行った。データ解析は、取得された配列に対してシロイヌナズナとルベラナズナを区別するunique SNPsを抽出し、それを評価することで全身移行性RNA分子を同定することにした。単一のunique SNPを扱う場合、シークエンスエラーによる偽陽性の問題があったため、複数のunique SNPを扱うこととした。そのため、複数のunique SNPを扱う解析パイプラインを構築した。用意した解析手法によって、シロイヌナズナ型の配列をもった187のRNA分子がルベラナズナの根から検出され、それらを全身移行性RNA分子とした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、シロイヌナズナとルベラナズナの芽生え接木実験を実施することができ、それらのRNAシークエンシング解析も実施することができた。さらに、解析において原理的に出現するシークエンスエラーによる偽陽性の問題を解消する解析のパイプラインを構築することもできた。実際に、187の全身移行性RNA分子を同定することに成功し、これは以前に別の組み合わせの別の時期の接木実験で検出した全身移行性RNA分子の数と同等であり、信頼度の高い結果が得られた。このように、現在まで研究は順調に進めることができている。
|
今後の研究の推進方策 |
全身移行性RNA分子を同定する解析パイプラインが構築できたため、全身移行性RNA分子の同定をさらに進める。これまでは通常の育成区で植物を育てた場合にどのような全身移行性RNA分子が検出されるかを検討したが、同様にして育成条件を栄養欠乏条件に移した場合に、どのようなRNA分子が全身移行性RNA分子として検出されるかを調べ、全身移行性RNA分子と環境特異的な全身応答性との関連性を調べる。また、RNA分子の全身移行という現象について、植物種を越えた保存性を検討するため、他の研究課題で解析してきたトマトの接木試料についても、本研究の解析パイプラインを用いて解析を行い、シロイヌナズナにくわえてトマトでも全身移行性RNA分子を同定したいと考えている。それらの検討で得られた情報から、今後はさらにRNAの移行に関わる共通の機構に迫りたい。なんらかの移行に関わるシス配列が介在している可能性があるため、配列をスキャニングして同定を試みる。そのように、分子機構を手がかりとして、全身移行性RNA分子の全体像を明らかにし、その機能に迫りたい。
|