公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
イネ科植物の茎は、節間基部に介在分裂組織(Intercalary meristem: IM)をもち、タケのような劇的な伸長能力をもつ。また、茎は草丈を制御するため育種上重要な標的となってきた。しかし、IMの発生制御機構はほとんど未解明であり、幹細胞制御の視点からも研究されていない。本研究では、地上部の主要な分裂組織の維持に不可欠なKNOX転写因子に着目し、IMの発生における細胞未分化性制御機構の解明と幹細胞の存在の検証を目指して研究を行った。(1)IM発生過程の特徴付けと幹細胞の存在の検証まず、IM発生過程の観察および形態・組織学的特徴づけを行い、発生ステージ・組織を分類した。この情報 をもとに節間部位・ステージ別トランスクリプトーム解析を行ない、節間形成に不可欠である既知の遺伝子や幹細胞制御に関わる転写因子がIM基部に特異的な発現を示すことを見出した。これらは有望な幹細胞マーカーと考えられたため、蛍光マーカーおよび変異体の作成を進めた。また、節間を構成する細胞の起源を明確にすべく、クローナル解析用レポーターの作成を進めた。(2)KNOX転写因子の細胞内局在制御機構の解明KNOXは地上部の主要幹細胞の未分化状態を維持する転写因子であり、その機能制御は植物の発生に重要であるが、翻訳後制御に関しては不明な点が多い。本研究では、イネKNOX転写因子OSH1の細胞内局在の詳細に観察し、KNOXは核のみならず、核外にも顕著に蓄積することが明らかとなった。Deletion解析の結果、OSH1は少なくとも3つの核外輸送に関わるアミノ酸領域を持ち、そのうち1つはExportin経路を介して制御されていることが示唆された。また、OSH1はリン酸化修飾を受けることも明らかとなり、KNOXの翻訳後制御機構の存在が明確となった。今後は同機構の生物学的意義を検証していく予定である。
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