公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
海洋の生物生産にとって必須栄養素である鉄の一般的な無機海水に対する溶解度は極めて低い。オホーツク海および北太平洋の中層水中では、鉄が理論的溶解度を大きく超える高濃度で存在し、中層水循環に伴い長距離輸送される事が、先行研究から示された。しかし、中層水循環に伴う長距離輸送を可能にする溶存鉄の化学形態に関する知見はほとんど無く、北太平洋における鉄循環の実状は解明されていない。本申請研究では、鉄と錯形成可能な有機配位子である腐植様溶存有機物(FDOM)に着目し、①オホーツク海海盆域から西部北太平洋亜熱域におけるFDOMと溶存鉄の南北断面の分布から、中層水循環に伴い長距離輸送される堆積物由来鉄に対するFDOMの貢献を明らかにする事、②2018年度に実施されるベーリング海の航海で観測および試料採取することにより、北太平洋の中層水中の溶存鉄の起源としてベーリング海を再評価する事、を目的とした。オホーツク海海盆域から西部北太平洋亜熱域におけるFDOMと溶存鉄、さらに見かけの酸素消費量の南北断面分布を比較した結果、北太平洋の中層水循環により輸送される溶存鉄の化学形態として、堆積物由来の外来性FDOMと錯形成している鉄、海洋で生成される自生性FDOM、コロイド態鉄に区別可能な事がわかった。更に、FDOMと錯形成している鉄が、中層水循環により、最も遠くまで(>4000 km)輸送される事が分かった。2018年度に実施されたベーリング海の航海およびその他の北太平洋全域で行われた12航海の結果を解析した結果、ベーリング海は外来性FDOMの主要な起源ではない事が明らかとなった。また、オホーツク海陸棚堆積物由来の外来性FDOMが中層水中では保存的に挙動する事が示唆され、溶存鉄の長距離輸送を可能にするキャリアとして、オホーツク海陸棚堆積物由来の外来性FDOMの重要性が強調された。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2021 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件) 備考 (2件)
Progress in Oceanography
巻: 191 ページ: 102510-102510
10.1016/j.pocean.2020.102510
Prog, Oceanogr.
巻: 193 ページ: 102552-102552
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10.1038/s41598-020-61375-7
https://pablos.ees.hokudai.ac.jp/yamashita/
https://www.hokudai.ac.jp/news/2020/03/4000km.html