宇宙放射線被ばくによる発がんリスクの推定； 病理およびゲノム変異解析から

• 研究領域: 宇宙からひも解く新たな生命制御機構の統合的理解
• 研究課題/領域番号: 18H04992
• 研究種目: 新学術領域研究(研究領域提案型)
• 配分区分: 補助金
• 研究機関: 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
• 研究代表者: 柿沼 志津子 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所, 副所長(任常) (20392219)
• 研究期間 (年度): 2018-04-01 – 2020-03-31
• 研究課題ステータス: 完了 (2019年度)
• 配分額: 9,620千円 (直接経費: 7,400千円、間接経費: 2,220千円); 2019年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円); 2018年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
• キーワード: 宇宙放射線 / 被ばく / 発がん / マウス / 生物影響

研究実績の概要

宇宙環境においてヒトは常に宇宙放射線を被ばくするため、将来の長期滞在に向けて最も関心の高い人体影響は、宇宙放射線被ばくによる発がんと継世代影響である。宇宙放射線の成分は地上と異なり、陽子線、中性子線に加えて、鉄イオンのような重粒子線が含まれるが、その発がんリスクのデータは不足している。
本研究では、①B6C3F1 マウスに鉄イオン、シリコンイオン、またはアルゴンイオンを照射した実験群の保存サンプルの病理解析を行い、各臓器の発がんリスクを求める。また、②ゲノム変異解析を行うことで線形エネルギー付与(Linear Energy Transfer : LET)の違いにより発がんメカニズムが異なるかを検討し、重粒子線（鉄イオン、シリコンイオン、アルゴンイオン）による、発がんリスクとゲノム変異の特徴を新たに提示することを目的とする。
H30 年度は、ガンマ線、シリコン、アルゴン及び鉄イオン照射後のマウスの寿命解析を行い、非照射群に比べたハザードリスクを求め、海外の学会等で報告した。鉄イオン誘発リンパ腫については、免疫染色により起源細胞（B 細胞かT 細胞か）を分類し、非照射またはガンマ線照射群のリンパ腫のデータと比較した。病理解析の終了した鉄イオン誘発がんについては、次世代シークエンサーを用いたエクソームシークエンス解析を開始した。令和元年度は、鉄イオン照射群に加え、シリコン、アルゴン照射群のリンパ腫と肝がんの病理解析を進めた。その結果、各放射線誘発群のリンパ腫と肝がん発生のハザードリスクには、線量依存性と線質依存性が認められた。ガンマ線誘発リンパ腫においては、放射線被ばく特有に早期に誘発される亜型を同定し論文投稿した。さらに、リンパ腫と肝がんのエクソーム解析を継続し、重粒子線被ばくによる発がんリスクとゲノム変異の特徴からメカニズムを明らかにすることが今後の課題である。

現在までの達成度 (段落)

令和元年度が最終年度であるため、記入しない。

今後の研究の推進方策

令和元年度が最終年度であるため、記入しない。

研究成果

• [雑誌論文] Space radiation biology for “Living in Space” (2020)
  • 著者名/発表者名: Furukawa S, Nagamatsu A, Nenoi M, Fujimori A, Kakinuma S, Katsube T, Wang B, Tsuruoka C, Shirai T, Nakamura AJ, Sakaue-Sawano A, Miyawaki A, Harada H, Kobayashi M, Kobayashi J, Kunieda T, Funayama T, Suzuki M, Miyamoto T, Hidema J, Yoshida Y, Takahashi A.
  • 雑誌名: BioMed Res Int. 巻: 2020 号: 1 ページ: 4703286-4703286
  • DOI: 10.1155/2020/4703286
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [学会発表] 放射線誘発ラット乳癌の全エクソーム解析 (2020)
  • 著者名/発表者名: 森山 ひとみ, 臺野 和広, 今岡 達彦, 高畠 賢, 森岡 孝満, 石川 敦子, 井上 一雅, 福士 政広, 島田 義也, 柿沼 志津子
  • 学会等名: 東京大学がんプロフェッショナル養成プラン大学院生研究発表会, 東京大学がんプロフェッショナル養成プラン
• [学会発表] 動物実験による放射線被ばく後の B 細胞リンパ腫のリスクおよび発症メカニズム解析 Analysis of the risk and underlying mechanism s of B cell lymphoma after radiation exposure by animal experiment (2019)
  • 著者名/発表者名: 橘 拓孝, 臺野 和広, 森岡 孝満, 石川 敦子, 金 小海, 小川 真里, 藤田 美鈴, 松浦 彰, 島田 義也, 柿沼 志津子
  • 学会等名: 第56回アイソトープ・放射線研究発表会, 日本アイソトープ協会
• [学会発表] 宇宙放射線被ばくによる発がんリスクの推定；病理およびゲノム変異解析から (2019)
  • 著者名/発表者名: 柿沼 志津子, 鶴岡 千鶴, 尚 奕, 甘崎 佳子, 今岡 達彦, 西村 まゆみ, 島田 義也
  • 学会等名: 新学術領域研究「宇宙に生きる」2019年度 第1回全体会議
• [学会発表] Risk of carbon ions irradiation on lifespan shortening after exposure of mice at fetal, childhood and adult periods (2019)
  • 著者名/発表者名: Shizuko Kakinuma
  • 学会等名: ICRR 2019
  • 国際学会
• [学会発表] Cancer risk after exposure to space radiation by pathological and genomic analyses (2019)
  • 著者名/発表者名: 鈴木 健之, 柿沼 志津子, 森岡 孝満, 臺野 和広, 鶴岡 千鶴, 尚 奕, 甘崎 佳子
  • 学会等名: 新学術「宇宙に生きる」若手夏合宿2019
• [学会発表] 放射線被ばく後のマウスB細胞リンパ腫の発症リスクと発がん分子機構の解析 (2019)
  • 著者名/発表者名: 橘 拓孝, 臺野 和広, 森岡 孝満, 石川 敦子, 尚 奕, 金 小海, 小川 真里, 藤田 美鈴, 松浦 彰, 島田 義也, 柿沼 志津子
  • 学会等名: 令和元年度若手放射線生物学研究会専門研究会, 若手放射線生物学研究会
• [学会発表] Subtype classification and whole-exome sequencing of γ-ray- or neutron-induced rat mammary carcinomas γ線あるいは中性子線誘発ラット乳がんの サブタイプ分類及び全エクソームシークエンス解析 (2019)
  • 著者名/発表者名: 森山 ひとみ, 臺野 和広, 今岡 達彦, 高畠 賢, 森岡 孝満, 石川 敦子, 井上 一雅, 福士 政広, 島田 義也, 柿沼 志津子
  • 学会等名: 第62回日本放射線影響学会大会
• [学会発表] Early-induction of precursor B-cell lymphoma in mice after radiation exposure and underlying molecular mechanisms 放射線を被ばくしたマウスにおける前駆B 細胞性リンパ腫の 早期発症とその分子機構 (2019)
  • 著者名/発表者名: 橘 拓孝, 臺野 和広, 森岡 孝満, 石川 敦子, 尚 奕, 金 小海, 小川 真里, 藤田 美鈴, 松浦 彰, 島田 義也, 柿沼 志津子
  • 学会等名: 日本放射線影響学会第62回大会
• [学会発表] Genomic and histopathological features of lung tumors in mice irradiated with different types of radiation (2019)
  • 著者名/発表者名: Kenshi Suzuki, Shunsuke Yamazaki, Ken-ichi Iwata, Yutaka Yamada, Takamitsu Morioka, Kazuhiro Daino, Yoshiko Amasaki, Mutsumi Kaminishi, Mari Ogawa, Yoshiya Shimada, Shizuko Kakinuma
  • 学会等名: Radiation Research society Annual Meeting
  • 国際学会
• [学会発表] Genomic alterations in spontaneous and radiation-induced hepatocellular carcinoma in B6C3F1 mice (2019)
  • 著者名/発表者名: Yi Shang, Kazuhiro Daino, Atsuko Ishikawa, Takamitsu Morioka, Shizuko Kakinuma
  • 学会等名: The 65th Annual Radiation Research Society Meeting
  • 国際学会
• [学会発表] APCMin/+マウスを用いた宇宙空間模擬環境による生体影響評価 (2019)
  • 著者名/発表者名: 鈴木 健之, 横溝 真哉, 鶴岡 千鶴, 上西 睦美, 岡部 まゆみ, 遠坂 歌子, 柳原 啓見, 武島 嗣英, 森岡 孝満, 神戸 崚輔, 高橋 昭久, 柿沼 志津子
  • 学会等名: 日本宇宙生物科学会第33回大会
• [学会発表] 重粒子線被ばくがマウスリンパ腫の発症に与える影響の解析 (2019)
  • 著者名/発表者名: 橘 拓孝, 小久保 結未, 天野 健太, 森岡 孝満, 臺野 和広, 金 小海, 石川 敦子, 藤田 美鈴, 小川 真里, 松浦 彰, 島田 義也, 柿沼 志津子
  • 学会等名: 日本宇宙生物科学会第３３回大会
• [学会発表] 中性子線誘発ラット乳がんの病理学的および遺伝子変異解析 (2019)
  • 著者名/発表者名: 森山 ひとみ, 臺野 和広, 今岡 達彦, 高畠 賢, 森岡 孝満, 石川 敦子, 西村 由希子, 井上 一雅, 福士 政広, 島田 義也, 柿沼 志津子
  • 学会等名: 日本宇宙生物科学会第33回大会
• [学会発表] Radiation exposure induces early onset of mouse precursor B-cell lymphoma with specific genomic aberrations (2019)
  • 著者名/発表者名: Hirotaka Tachibana, Kazuhiro Daino, Takamitsu Morioka, Yi Shang, Atsuko Ishikawa, Mari Ogawa, Misuzu Fujita, Akira Matsuura, Hiroyuki Nogawa, Yoshiya Shimada, Shizuko Kakinuma
  • 学会等名: 16th International Congress of Radiation Research
  • 国際学会
• [学会発表] Whole-exome sequencing analysis to identify somatic mutations in radiation-induced rat mammary carcinomas (2019)
  • 著者名/発表者名: Hitomi Moriyama, Kazuhiro Daino, Tatsuhiko Imaoka, Masaru Takabatake, Takamitsu Morioka, Atsuko Ishikawa, Kazumasa Inoue, Masahiro Fukushi, Yoshiya Shimada, Shizuko Kakinuma
  • 学会等名: The 16th International Congress of Radiation Research
  • 国際学会
• [学会発表] ISS搭載凍結受精卵に対する宇宙放射線の影響 (2019)
  • 著者名/発表者名: 柿沼 志津子, 鶴岡 千鶴, 塚本 智史, 鬼頭 靖司, 小久保 年章, 和田 彩子, 畠山 朋美, 島田 義也, 矢野 幸子, 鈴木 智美, 東端 晃, 多田 基紀, 鈴木 ひろみ, 嶋津 徹
  • 学会等名: 日本宇宙生物科学会 第33回大会
  • 招待講演
• [学会発表] Cancer risk after exposure to space radiation by pathological and genomic analyses (2018)
  • 著者名/発表者名: Shizuko Kakinuma, Xiaohai Jin, Hirotaka Tachibana, Takamitsu Morioka, Kazuhiro Daino, Chizuru Tsuruoka, Yi Shang, Yoshiko Amasaki, Yoshiya Shimada
  • 学会等名: 44th European Radiation Research Congress
  • 国際学会
• [学会発表] 重粒子線・中性子線施設を用いた宇宙放射線影響研究 (2018)
  • 著者名/発表者名: 柿沼 志津子, 鶴岡 千鶴, 尚 奕, 甘崎 佳子, 今岡 達彦, 西村 まゆみ, 島田 義也
  • 学会等名: 日本宇宙生物科学会第32回大会,
  • 招待講演
• [学会発表] 線質の異なる放射線誘発マウス肺がんの病理組織学的評価 (2018)
  • 著者名/発表者名: 鈴木 健之, 柿沼 志津子, 森岡 孝満, 臺野 和広, 甘崎 佳子, 小川 真里, 岩田 健一, 山崎 隼輔, 山田 裕, 島田 義也
  • 学会等名: 日本放射線影響学会第61回大会
• [学会発表] 鉄イオン線照射後のマウスに発生するリンパ系腫瘍の解析 (2018)
  • 著者名/発表者名: 小久保 結未, 森岡 孝満, 臺野 和広, 金 小海, 石川 敦子, 橘 拓孝, 小川 真里, 藤田 美鈴, 柿沼 志津子, 田代 聡
  • 学会等名: 日本放射線影響学会第61回大会
• [学会発表] Effect of radiation exposure on mouse B-cell lymphoma development (2018)
  • 著者名/発表者名: 橘 拓孝, 臺野 和広, 森岡 孝満, 石川 敦子, 金 小海, 島田 義也, 柿沼 志津子
  • 学会等名: 第77回日本癌学会学術総会
• [学会発表] 高LET放射線によって生じたマウス肺がんの病理組織学的評価 (2018)
  • 著者名/発表者名: 鈴木 健之, 山崎 隼輔, 岩田 健一, 森岡 孝満, 臺野 和広, 甘崎 佳子, 小川 真里, 山田 裕, 島田 義也, 柿沼 志津子
  • 学会等名: 宇宙生物科学会第32回大会
• [学会発表] 宇宙放射線被ばくによる発がんリスクの推定：病理およびゲノム変異解析から (2018)
  • 著者名/発表者名: 柿沼 志津子, 森岡 孝満, 鶴岡 千鶴, 尚 奕, 甘崎 佳子, 臺野 和広
  • 学会等名: 新学術領域「宇宙に生きる」2018年度第1回全体会議
• [学会発表] 様々な線質の放射線により生じたマウス肺がんの病理組織学的評価 (2018)
  • 著者名/発表者名: 鈴木 健之, 山崎 隼輔, 岩田 健一, 森岡 孝満, 臺野 和広, 甘崎 佳子, 小川 真里, 山田 裕, 島田 義也, 柿沼 志津子
  • 学会等名: 新学術領域研究【宇宙に生きる】2018年度 第2回全体会議
• [学会発表] 様々な線質の放射線により生じたマウス肺がんの病理組織学的評価 (2018)
  • 著者名/発表者名: 鈴木 健之, 山崎 隼輔, 岩田 健一, 森岡 孝満, 臺野 和広, 甘崎 佳子, 小川 真里, 山田 裕, 島田 義也, 柿沼 志津子
  • 学会等名: 平成30年度「宇宙に生きる」若手夏合宿
• [学会発表] 電離放射線被ばく後のマウスB細胞リンパ腫の発がんリスク (2018)
  • 著者名/発表者名: 橘 拓孝, 森岡 孝満, 臺野 和広, 金 小海, 小川 真里, 島田 義也, 柿沼 志津子
  • 学会等名: 平成30年度「宇宙に生きる」若手夏合宿