公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本研究では、チンパンジーとヒトの成人、児童を対象に、実世界の多様な人工物や自然物の質感の識別と選好について検討することにより、質感知覚の種を超えた普遍性と特殊性、文化・社会的な影響を明らかにすることを目的としている。本年度は特に、特定の質感がもたらす選好や情動への影響について着目した。ヒトの幼児や児童を対象とした研究では、(1)絵画の色彩の組み合わせに対する選好、(2)ハスの花托や蜂の巣のような穴や円形物体の集合体に対して生じる不快感、集合体恐怖の認識について検討した。(1)では、6歳から12歳の児童80名を対象に、絵画の色彩の組み合わせで最も好きなものを4つの中から1つ選択する課題をおこなった。(2)では、4歳から9歳の幼児や児童64名を対象に、パソコン画面上に呈示された写真の印象を答えてもらう課題をおこなった。いずれも、成人の結果と比較することにより、質感への選好や不快感がいつ頃から生じるのかについて検討した。チンパンジーを対象とした研究では、(1)絵画の色彩の組み合わせの識別、(2)チンパンジーの配偶者選択に関わる社会的シグナルとして、性皮の質感への選好について検討した。(1)では、6個体のチンパンジーの成体を対象に、複数の絵画の画像の中から1つだけ配色を反転させた絵画の画像を検出する視覚探索課題を実施し、検出の容易さから情報処理の流暢性について推測した。(2)では、チンパンジーの生存や繁殖に関わる質感の違いへの選好を確かめるために、7個体のチンパンジー(オス3個体、メス4個体)を対象に、性皮の最大腫脹と最小腫脹の画像に対する注視時間の偏りについてアイトラッカーを用いて分析した。以上の研究結果をもとに、質感知覚の感性的側面の発達過程とヒトとチンパンジーに共通の進化的基盤について考察した。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2020 2019 2018
すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
科学
巻: 11 ページ: 1134-1135